「おかえりなさい!どうでした??」
玄関を開けるなり犬のように仗助くんがまとわりついてきた。いつもの笑顔を見ると張りつめていた気持ちが一気に解ける。大きく溜息をついて、ただいま!と笑顔を見せた。
「…どうもなにも、私にはわかんないよ。」
「それもそうっスね。…でも、頑張ったんだろ?」
その問いに力強く頷けば、仗助くんは「お疲れ様」とにっこり笑って、子どもを褒めるときみたいに私の頭をわしわしと撫でた。なんだかやっと人心地ついたような気分。あとは試験官の采配次第で、私がどうにかできることではない。この堅苦しいスーツも、早く脱いでしまおう。
「…ありがと。着替えるから待ってて。」
「え、ななこさん何言ってんスか!」
仗助くんの言葉にきょとんとしてしまう。何か変なことを言っただろうか。不思議そうな私を見て、仗助くんは悪戯っ子みたいな笑みを浮かべた。
「…それ、クリーニング出すんでしょう?」
「…うん、そうだけど…」
「じゃあ、チコッとくらい汚してもいーっスよね?」
言うが早いか抱き上げられ、ベッドに放り投げられる。悲鳴をあげる間も無く、唇を塞がれた。
「…ッんんっ…!」
「…こないだっから、お預け食らってたから…」
息を乱しながら、獣みたいな瞳で仗助くんが私を見つめる。身を捩ってみたものの組み敷かれてしまっては逃げ出すこともできない。いくらクリーニングに出すからと言っても新品のスーツがシワになるのは嫌だし、何よりも仗助くんの目が座っててヤバい。
「…っ、ちょ…やッ、待っ…」
「なんか…スーツで抵抗されると…イケナイコトしてるみてーですげーコーフンする。」
ストッキングもエロいっスよねぇ…なんて言いながら、仗助くんはジャケットのボタンを外して、シャツを思い切り捲りあげた。糊の効いたシャツが無残に歪む。もしかしたらボタンが外れたんじゃあないかと心配になる。
「ね、ホント待って、脱ぐからッ…」
「何言ってんスか。着てるからいーんスよ。」
私の言葉なんて聞いちゃあいない仗助くんは、性急に愛撫の手を進めていく。タイトスカートをたくし上げられるのが嫌で、両手でぎゅっと押さえた。
「…そんなに無理矢理されてーの?」
ギラリ、と音がしそうなほどの視線で射抜かれる。怯みそうになったけど、ぐっと力を込めて抵抗を続ける。
彼は私を試すみたいに笑って、無理矢理にスカートをたくし上げた。固い素材の布が引き上げられて皺を作る。
「…やっ、やだ…!」
「…そんなこと言って、ホントに嫌かどうかはすぐわかっちゃうんスからね?」
ストッキング姿なんて自分で見たって間抜けなのに、見せるなんて恥ずかしすぎる。仗助くんはいとも簡単に私の足を開かせて、あろうことかそのままストッキングの内腿の部分に爪を立て、勢いよく引き裂いた。
「やっ、やめてってば…!」
「うわ、これすっげーえっちっスね…」
本当に恥ずかしいからやめて欲しい。太腿を撫でられると、ストッキング越しの部分と素肌の部分とで仗助くんの手の感触が違う。下着越しに何度も指先で撫でられると身体が勝手にその先の刺激を期待してしまう。無意識に腰を揺らすと仗助くんはくすりと笑って、下着を僅かばかり横にずらし、指先を捩じ込んだ。
「…ぅあッ、…仗助くん…ッ」
お尻も爪先も普段と同じように布で覆われているのに、仗助くんの指先が私の身体に沈んでいる。仗助くんだって、服を着たままだ。私だけ乱されているような気がして仗助くんを見れば、今まで見たこともないような顔をしていた。
「ななこさん、すげーエロい…」
視線に縛られて、身動きが取れない。もうなんか、このまま食べられてしまうんじゃあないかと思うくらい。
仗助くんは吐息混じりに「もう、いいっスよね?」と指先を引き抜き、もどかしげにズボンのベルトを外した。僅かにずらした下着の隙間を無理矢理抉じ開けて、一気に貫かれる。
「…ッ、ななこさ…」
「ひぁ、あぁッ!や、ああっ、」
彼は熱に浮かされたように私の名前を呼びながら、荒げた息を隠す事もなく、好き放題私を弄ぶ。髪型を貶された時と同じように、もう私のことなんか見えていないのかもしれない。
いつもだったら背中に爪でも立ててやるところなんだけど、今日は残念ながらそれも叶わず、私は全てを諦めて、目の前の快楽を味わうことにした。
「ゴメン…拗ねんなよォー…」
「やだ。バカ!」
下着もストッキングも、あげくスーツも汚された私は、とりあえず手近な部屋着に着替えた。汚れた服はとりあえず床にまとめてある。体液で汚れてしまったスーツは、シミにならないだろうか。こんなの恥ずかしくてクリーニングに持っていけないし、ストッキングに至ってはもはやゴミだ。
「ほら、ちゃあんと直したからさー…」
仗助くんはそう言って、私が脱ぎ捨てたストッキングを拾い上げてこちらに差し出した。いくら元に戻ったからといって、あんなことをされてしまったら履く気にはならない。
「…いらないよ」
下ろしたてだったのに。ひどい。顔も見たくないとばかりに思いっきり背を向けると、仗助くんは静かになった。
あんまり何も言わないので、不安になって振り向くと、仗助くんは握り締めたストッキングをあろうことか自分のズボンのポケットに仕舞い込んでいた。
「…ちょ、なんでしまうの!」
「えー、だってななこさんいらないんだろ?…仗助くんこれもらって後で使うから」
使う、って何に…いや聞くまい。それくらい私にも想像がつく。本当にこの年下の彼氏はどうしようもない。
「…じゃあそれあげるからずーっと一人でしてれば!ばか!」
「…そんなことんなったら、寂しーのはななこさんの方でしょう?」
さも当然と言った調子で返された。…本当のことだから尚更腹が立つ。
20170310
お疲れ様でした!!!
prev next
bkm