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◯◯にも縋る

氷河期、なんて言葉がまさか私の人生に来るとは思ってもみなかった。

「恐竜だって絶滅したのに、乗り越えろったって無理な話じゃない…?」

スーツの埃を取りながら溜息を吐けば、「恐竜がどーしたってェ?」と仗助くんの呑気な声が背後から聞こえた。のしのしとこちらに向かう様は恐竜なら間違いなく大型種だ。

「あ、スーツじゃん。…どーしたの?」

「…就職活動。面接行くの…」

盛大なため息と共にそう返せば、彼は私の背をぽんと叩いて「なぁに暗い顔してんスか。…夢への第一歩、ってやつじゃあねーの」と笑った。

「で、恐竜となんの関係があんの」

「…いや、氷河期で恐竜が絶滅したのに、私ごときが就職氷河期を乗り越えられる気がしないなと…」

私が言い終わる前に仗助くんは思いっきり吹き出し、真面目な顔で何言ってんスか、と笑った。

「…つーか、隕石で死んだんじゃあねーの?恐竜。」

「えー、そうだっけ?」

この際恐竜の絶滅理由なんてどうでもいいんだけど、と私は再びスーツのブラッシングを始めた。仗助くんはハンガーにかかったスーツを上から下までじっくりと見て、「…ねぇ、着てみてよ」なんて私を見た。瞳の光にわかりやすいシタゴコロが透けている。

「やだよ。どうせ『なんかエロい』とかなんとか言って汚されちゃうんでしょう?ダメだよ使うんだから。」

「…んだよ。…じゃあよォ、仗助くんが面接の練習してやるよ。」

はい、そこ座って、と有無を言わせない勢いでベッドに座らされて、仗助くんは私の向かいに陣取った。

「…じゃあ、始めます。お名前は?」

「…ななこ、です。」

やけに真剣な顔で問い掛けられて、思わず背筋を伸ばした。わざとだろうけれど眉間に皺を寄せる姿なんて滅多に見れるもんじゃあなく、仗助くんってホント格好いいんだなぁ…と改めて思う。

「…弊社への志望動機は?」

「御社の経営理念に共感して…」

覚えた回答を必死に唇に乗せる私に、仗助くんが近づいて来る。どうしたの?と思ったけれど言葉を止めたら忘れてしまうから、志望動機を述べるのは止められない。
ついに仗助くんが、私の目の前に来た。

「…ねぇ、俺今すげーコーフンしてんの。」

「…は?」

仗助くんの手に導かれて触れた彼の股間は、言葉通りしっかり自己主張をしていて。
いや今までのクソ真面目なやりとりに興奮する要素なんて微塵も見当たらないのに。

「…だってよォ…これ、どう見たってぜってーアレじゃん…AVの面接。っつーことで、質問には答えてな?」

言われてみれば、ベッドに腰掛けて緊張した面持ちの面接なんて、まるでAVのオープニングだ。…それにしたって想像力が豊かすぎやしないか、とそこまで思い至る間に、仗助くんの手は私の胸を捕まえていた。

「…ななこちゃんは、何カップなの?」

「…そんなの…知ってるでしょ…?」

「そーじゃあないんスよ。今は『面接の練習』してんの」

答えられないならお仕置きっスよ、なんてギラギラした目で首筋に噛み付いて来る仗助くん。

「私が真面目にやってんのにふざけないで!」

こちとら人生掛かってんのよ!と仗助くんの身体に思いっきり拳を叩き込む。うぐ、と間抜けな声を上げてうずくまる仗助くん。…ちょっとやりすぎただろうか。でもこんな緊張しているところを揶揄われたって、許せる余裕なんかない。

「…ふざけてないっスよぉ…」

なんとも情けない声を出しながらどうにか起き上がった仗助くんは、「でもだって、ななこさんがエロいんだもん。」と、怒られた小学生みたいな言い訳をした。

「…ホント、余裕ないから…悪いけど…」

「…大丈夫ですって。」

ぎゅう、と柔らかな温もりに包まれる。仗助くんは私の髪を撫でながら、無責任なコトは言いたくねーけどよォ、と続けた。

「スタンド使いが引かれ合うみたいに、なんか…あんだろきっとそーいうのが。」

だから、受かっても落ちてもそーいうもんなんだよ、と彼は言った。

「そうは言われても、死活問題なんだけど…」と返したけれど、縁なんてそんなものなのかもな、と心の奥で納得してしまった私の言葉はあまり説得力がない。

「あ、じゃあホラ、お守り作ろーぜ!」

「…お守り…?」

いいこと思いついた!と言わんばかりのキラキラの笑顔で笑う仗助くんを不思議そうに見つめる。お守りを作る、って彼は一体どうするというのだろう。私の視線を受け止めた仗助くんが悪戯っぽく笑う。

「良くさぁ、処女のインモーがお守りになるじゃん?だからほら、バックバージンな仗助くんの毛でも大丈夫じゃねーの」

今むしるから、と冗談だか本気だかわからない仗助くんの言葉に、なんだか緊張感がなくなって、思わず笑ってしまった。

「やだ、なにそれ!」

「…そーやって笑った顔で面接すりゃあイチコロなんじゃあねーの。」

あ、でも面接官に浮気はナシな、なんて冗談を言いながら仗助くんは笑う。もし私がそのお守りが欲しいって言ったら、本当にくれる気なんだろうか。

真剣な面接の場で仗助くんの陰毛を握り締める自分を想像したらなんだかおかしくて、それってとても心強いお守りなんじゃあないかと思う。仗助くんがいてくれたら、なんだかどこへ行っても大丈夫な気がした。


20170306

面接頑張ってくださいー!!!
下品なネタで申し訳ないですが、応援しています!!!


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm