dream | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

初恋中毒

出会いなんて割とありふれた話。
知人の知人。たまたま会って、挨拶されたってだけ。

「…承太郎さん。」

「……あぁ、仗助か。」

普段は一人でいることの多い承太郎さんの隣に、珍しく小さな女性がいて。

「…君が仗助くん?噂は聞いてます!」

なんて笑う顔が、なんでだか頭から離れなくなった。別に胸が熱くなったとか、恋に落ちる音が聞こえたとか、そんなんじゃあない。…馬鹿馬鹿しい。

「…あ、ななこさん。」

「こんにちは、仗助くん。」

ほら別に、会ったからってドキドキするだとか、キンチョーして話せないだとか、そーいうのはないんスよ。ただ、目の前のななこさんが、承太郎さんのことを話す時だけ一瞬大人びた表情をするのが、なんでかとても切ないだけ。

ななこさんとおしゃべりするのは、まるで日向ぼっこしてるみたいにほんわかした幸せな気持ちになる。学校での出来事とか、昨日のテレビの話とか、ファッションの話とか。他愛もない話でも、俺たちの会話は結構弾むし、何より俺を見かけるとななこさんが「そこのカッコいいおにーさん、お茶でも飲んでかない?」なんて冗談みたいに誘ってくれるから。

「…奢ってくれんならいーっスよ!」

「当ッたり前じゃん!イケメン連れ歩く対価にしたらコーヒーくらい安いもんだよ。」

お日様みたいに明るいななこさんは、お日様とおんなじく、俺の手の届かないところにいるんだろうか。

「…さて、そろそろ帰ろっか」

いつもそうだ。ななこさんは気紛れで、唐突にサヨナラになる。俺はもっと彼女と一緒にいたいけど、引き止める言葉なんて全然思いつきもしなくて、今日こそ連絡先を聞こうとさっきから取り出していた携帯電話を無意味にパカパカと開いたり閉じたりする。俺の鼓動が早くなっているのを誤魔化すみたいに。

「…おれ、もうチコッとゆっくりしたいんスけど。」

パカ、と勢い良く携帯を開きながら言ったはずの言葉は、思いの外不機嫌そうな、まるで冷えた音をしていた。ホントは、「ななこさんと一緒にいたい」とか「今夜は帰さない」とか、もっとわかりやすい無茶を言いたかったのに。
ななこさんは面喰らった顔をして、それでも「…どうしたの?」なんて俺を気遣うような笑顔を見せてくれた。

どうしたも何も、アンタが好きなんス!

そう一言告げればいいだけなのに、どれだけ息を吸い込んでもなんにも出てこなくって。ドラマやなんかじゃあ簡単に出てくるその言葉は、今俺の座る場所からとんでもなく遠くにあるんじゃあないだろうか、なんて。

「…俺、ななこさんに相談したいことがあるんですけどォ〜…」

「え?なになに?」

おねーさんで良ければ聞くよ?なんて身を乗り出されてしまって、思わず苦笑い。
好きな相手にその恋を相談するとか、俺ぜってー間違ってると思う。けれど彼女の気を引く方法が、それくらいしか思い浮かばなくて。

「仗助くん、好きな子いるの!?」

きゃー本当に?恋バナ聞いていいの?とか、仗助くんならどんな子だってイチコロでしょう、なんて無神経に瞳を輝かせるななこさんは、自分がその恋の相手だって知ったらどんな顔をするんだろうか。

しばらくは見られそうにないその顔を夢想しながら、俺はどれだけ「彼女」が好きかをななこさんに語って聞かせるのだった。



20161114

アンケ回答ありがとうございました!
一番多かった「片思い」で。


萌えたらぜひ拍手を!


prev next

bkm