お子様仗助。
2011年に書いたメモを加筆修正。
元々はU-14の二人だったので、仗助のキャラが違うかも。
世界は俺のために回ってんの。
だからアンタも俺のもの。
思い通りにならないことばっかりだ。
それでも世界は回ってる。俺のために、みんなのために。
「私、仗助のモノにはなりたくない。」
そう言って走って逃げた可愛くて鼻っ柱の強いななこのためにだって、地球も、世界も、回ってくれてんだろうか。
「…あー…カッコ悪ィ…」
俺の涙だって、重力がなきゃ落ちないし、空気がなきゃ、ななこの声だって聞こえない(確か小学生んとき理科で習った)。
やっぱり、地球は回ってる。
俺が失恋したって、変わらずに。
次の日、俺が重い重い瞼で学校に行ったら、ななこが駆け寄ってきて心配そうに口を開いた。
「どーしたの仗助!大丈夫!?」
「やー、昨日フラれちまってさ。」
言いながら笑顔を作ろうと思ったのに、唇が歪むばかりで笑えている気がしない。
やべ、ホラ、笑え俺!
「仗助、ちがう!」
ななこはその細腕からは想像も付かないような力で俺を引っ張る。
女なんだからもっと優しくしろよ。
いや、優しくすんなよ。
「…なんだよ。」
あーカッコ悪ぃ。俺だっせー。
「ごめん、あの…私、昨日、びっくりして…」
何が違うんだよ!って怒鳴ってやりたかったけど、これ以上惨めな気持ちになりたくなくて、ぎゅっと唇を噛んだ。
ななこはそんな俺を見て、バツが悪そうな顔で静かに続ける。
「私…いつも仗助に頼ってばっかりで、」
「仗助が私を好きって言ってくれてすごく嬉しいけど、『仗助のもの』って、私そんなに頼りっぱなし…いや、頼りっぱなしなんだけど、でもやっぱり、私、自分の意思で、仗助のそばにいたいって…」
言いながらななこは泣きそうな顔で頭を下げた。誤解させてごめん、って。
「…っつーことはよォー…」
「…私も、仗助が…、好き。」
消え入りそうな声だったけど、その一言はちゃあんと俺の耳に届いた。それってつまり、俺の勘違いってわけで。
「でも私、そんなに仗助に愛されてるとか思わなかったな。」
嬉しそうに笑うななこはムカつく。俺がどんだけショックだったかも知らないで。
「…調子に乗んなよ!」
恥ずかしさを誤魔化すようにななこの頭を小突けば、彼女は俺の制服の裾をちょんと引っ張り、屈むようにと促した。不思議に思いながら腰を落とすと、頬に柔らかな感触。
「…お詫び。」
彼女は悪戯が成功した子供よりも満足気な笑顔で、驚く俺を見ている。それがなんだか心をざわつかせて、俺は騒めきを抑え込むようにななこの頭をぎゅうと押した。
「ななこのくせに生意気なんじゃねーのォ?」
やっぱ世界は俺のために回ってるよなァ、なんて大概俺も単純だ、と緩む頬を隠しもせずに考えた。
20160421