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スキスキッス!

「…東方くん、あの、」

机の前に見慣れたセーラー服が立ち止まる。
突っ伏していた頭を持ち上げると、目の前にはななこちゃんがいた。俺はこの子の唇がすげー好きだ。

普通の薬用リップしか使ってないのに、グロスを塗ったそこらへんの女子なんかよりずーっと柔らかそうでキメが細かくって。

ぶっちゃけて言っちまえば、触りたくって仕方ない。

「…なんスか?」

「さっきの授業のプリント、東方くんのだけないって…」

そう、今日ななこちゃんは日直だから。だからわざと、忘れた。彼女に話しかけてもらうため、俺の計画を実行するため。

「あー、理科室に置いてきちまったかも。…取ってくるね。」

「提出するの職員室だから、私も一緒に行くよ。」

ななこちゃんが真面目で良かったなーと思う。ここまでは完璧、俺の計画通り。
あとは、彼女がどこまで俺を許してくれるか。自慢じゃあないけど俺は女の子からはモテるし、ななこちゃんからだって嫌われてない自信はある。

「悪ィな、付き合わせちまってさァ。」

「全然大丈夫だよ。…ごめんね、せっかくお昼なのに。」

理科室に戻って、後手にドアを閉める。
昼休みにこんなところに来る奴はいないから、今、俺とななこちゃんは二人っきり。

「いや、俺こそ『ごめん』な?」

プリントを探そうと理科室を見渡すななこちゃんの柔らかそうな頬に唇を落とす。
少し屈むだけで簡単に白い頬に口付けることができるなんて、ちこっとムボービ過ぎじゃあないんスかねぇ?

「…え?」

何が起こったか理解できずに俺を見つめるななこちゃん。その唇はぽかんと開かれて、まるで俺を誘っているみたいに。

「…目、閉じて。」

片手で顎を軽く持ち上げて、開かれたまんまの唇に自分のそれを合わせた。
想像よりずっと、柔らかくてあったかい。
多分今までの誰よりも、俺好みの唇。

「あ、の…ひがしかた…くん、…」

「誰も来ねーから、大丈夫。」

目を見開いて後ずさりするから、ゆっくりと距離を詰める。壁際に背中がくっついてしまったななこちゃんは、捨てられた犬みたいな目で俺を見上げた。

「…ど、して…?」

「…したかったから。ななこちゃんは、俺じゃダメ?」

抵抗されないのをいいことに、もう一度唇を近づける。ななこちゃんは困ったような顔で、ぎゅうっと目を閉じた。

「ひがしかたく…っん…んんッ!」

「…すげー、柔らかい。俺、ななこちゃんの唇が、いちばん好き。」

囁くように耳元で告げれば、彼女の肩が震えた。困ったように下唇を噛みしめるから、親指の先でそっと解すように撫でた。

「せっかく可愛いんだから、噛んじゃダメっスよ。」

「…だって、急にこんなの…」

ななこちゃんは戸惑いながらも噛み締めた唇をゆっくりと解く。俺にされるままなのは、嫌じゃないって思っていいんだろうか。

「急じゃあないんスよ。…ずっと、見てた。」

気がつかなかった?と屈んで覗き込めば、真っ赤になったななこちゃんが困ったように頷いた。見てなくったって「仗助くんがこっち見た!」と騒ぎ立てる勘違いヤローだって多いのに、なんて謙虚なななこちゃん。俺はあんなに見てたっつーのに。

「誰にでも…するの…」

「ななこちゃんが俺と付き合ってくれたら、アンタとしかしないっスよ?」

他の誰よりも好きだから。彼女が好きにさせてくれるっつーなら、他の誰ともキスしないなんて簡単だと思う。まぁ、そんな我慢今までしたことねーから、多分スけど。

「…じゃあッ!…私以外と、しないで…」

「グレート。」

真っ赤になりながらななこちゃんは俺を見上げる。彼女の赤い唇が色好い返事を紡ぐのが、ひどく色っぽく見えて、もう一度感触を確認するようにそっと唇を重ねた。

「東方くん…」

「…じょーすけ、って、呼んで。」

この唇が俺の名前を呼ぶところが見たくて、キスしそうな距離のままそっと囁く。
彼女は顔を背けながら、小さく唇を俺の名前の形に動かした。

「…これからは、ずっとそれな。」

「…そんな、急に…!」

「恋人なんだから、トーゼンっしょ。」

「東方くんっ、ん…!」

呼ばれた名前を遮るように口付けた。
ななこちゃんの反応はいちいち新鮮で、このまま舌突っ込んだらどんな反応するかな、なんて意地の悪い考えが頭を過る。…まぁまだまだ楽しみたいから、今日の所は我慢するけど。

「違うだろォ?間違ったらお仕置きにキスするから。」

教室でも外でも、俺は気にしないっスよ?と言えば、彼女は恥ずかしそうにふるふると首を振った。そうして、さっきの一言を訂正してくれる。

「…じょ、ーすけ、くん…」

「…よくできました。」

ちゅ、と音を立てて額に唇を落とすと、ななこちゃんはその可愛らしいおデコを両手で押さえて「なんで!」と不満の声を上げた。

「…今のはごほーびのキスっスよ。」

「…どっちにしろするなんてひどい…」

ひどい、とは随分な。仗助くんの唇なんて世の女の子が求めて止まないモノをななこちゃんだけのにしてあげようってのに。

「ね、もしかして、初めて?」

「…そんなのッ…当然…」

足跡のない雪原に一歩踏み出したみたいな満足感。あぁもうホント、可愛くって仕方ない。

「じゃあ、ななこちゃんの初ちゅーのお礼に」

そこまで言った所で、ななこちゃんは両手で唇を覆った。あんだけキスしたらまぁ当然の反応かもしれないけど、慌ててそんなことするから、逆に期待されてんのかなって思う。

「なにそれ。…もっと強引にキスして欲しいんスか?」

「…だめ!」

ぶんぶんと勢い良く首を振る。普通にしてても可愛いけど、からかうともっと可愛い。無理矢理腕を外して、ぐっちゃぐちゃに掻き回してやりたい。ここで強引に口付けたら、嫌われてしまうだろうか。

「うそうそ冗談。お礼はねぇ…ちょっと耳貸して?」

「…なぁに…?」

少しばかり不安げに瞳を揺らして、ななこちゃんは俺を見つめる。真っ赤になった耳が可愛くて、唇がくっつくくらいに顔を寄せた。

「ななこちゃん、大好き。」

その一言でこれ以上ないくらい真っ赤になる彼女があんまり可愛いから、そのままもう一度口付けた。


20151102


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm