正直、年下がこんなに可愛いなんて思わなかった。ずっと、母親の同僚だとかの年上のおねーさんに可愛がられてたし、そっちの方が実入りが良かったから。
「東方先輩!」と呼びながらこちらに駆けてくる姿とか、恥ずかしそうに俯く赤い頬とか。仔犬に懐かれた時のような、幸福感。
まるで映画のヒーローを見るみたいな瞳で俺を見つめる、可愛い子。
「ななこちゃん。」
名前を呼んだ時の、嬉しそうな顔。振り返ると黒髪がさらりと流れる。
長くても短くても、彼女の髪はさらさらとして綺麗だと思う。
ただ、ちこっとだけ、困ったことがある。
彼女は本当に「油断しているウサギちゃん」だってこと。
俺たちが出会うキッカケになったから、そこだけは感謝したいんだけど、歩いているだけで絡まれてしまうくらいに彼女は人目を惹く。
もうホントに、誰かに食べられる前に俺が食べちまうぞ、って思う。
無防備な笑顔の前でそんなことを考えていると、なんだか自分が酷い人間になっているような気がしてしまって、罪悪感。
俺は、ななこちゃんのヒーローでいたいのに。
*****
「東方せんぱい!」
「だーからぁ、仗助って呼べって言ってるっしょ?」
最近は暑いのでななこちゃんはやっと結えるようになった髪を小さく纏めている。
首を振るとぴょこぴょこ跳ねる毛先が小動物のしっぽのようで可愛い。
「…恥ずかしーです。」
「…んじゃ、仗助って呼んだらちゅーしてあげよっか?」
「…それじゃ、余計に呼べません…!」
もうすぐ夏休みで、そうしたらこうやって一緒に帰ったりできなくなるなと思うんだけど、夏休みだからこそできることもあるわけで。
「…もうすぐ夏休みだけど、せっかくだからさ、休みになったらウチに遊びに来ねえ?」
あからさまな下心。でもななこちゃんは、俺の思いには気付きもせずに、嬉しそうに返事する。ああもう、ホント油断しているウサギちゃんめ。
「せんぱいの部屋、楽しみ!」
呑気にしてると、食べちゃうぜ。
*****
「…こんにちはー。」
「…よぉ、上がって。」
見慣れぬシャツワンピをさらりと身にまとって、帽子を被ったななこちゃんは、雑誌の夏のお出かけ特集に出てきそうな可愛さでもって、玄関先に表れた。
「これ、お土産です。」
「あー、気ぃ使ってもらってごめんな?今日誰もいねーから、後で食べよ。」
可愛らしく小首を傾げながらケーキ屋さんの箱を渡してくる可愛い姿にグレート!と心の中で呟いて、俺は彼女を部屋まで案内する。
待ちきれずに早起きしてしまって、手持ち無沙汰でやりかけのゲームを進めていたら思いの外時間が過ぎていたので、部屋は少しばかり散らかっている。
「ゲームやってたんですか?」
「あー、うん。ななこちゃんもやったりする?」
「私は、あんまりやらないかな。」
彼女は興味深い様子で、ゲーム画面を見つめている。ダンジョン内でセーブポイントは少し前だったけど、まぁいいやと電源を切る。
「ごめんな、散らかってて。」
「そんなことないです。オトコの人の部屋って初めてだから、なんか変な感じ。」
ななこちゃんは遠慮がちに部屋を見回して、それから俺に促されるまま、ベッドの端にちょんと腰掛けた。
座らせておいてなんだけど、これってもう、押したらいけちゃうんじゃねーの。
彼女はただ座ってるだけだってのに、俺は邪念しか沸かなくって、仕方ないからななこちゃんが持ってきたケーキを出そうと立ち上がる。楽にしてていいから、と声を掛けてから部屋を出た。
ななこちゃんが持ってきた箱には、色とりどりのケーキが所狭しと5つ並んでいた。
生憎俺とななこちゃんしかいないので、その箱ごとトレイに乗せる。
冷蔵庫から麦茶のポットと、それから氷をたっぷり入れたグラスを二つ。
ひっくり返さないように慎重に部屋まで運ぶ。
「…ケーキ、いっぱい買ってきたんスねー。」
ドアを開けてベッドにななこちゃんの姿を見て、俺は持っていたトレイをひっくり返しそうになった。
「…あ、先輩。このぬいぐるみ、ふかふかー。」
以前億泰とゲーセンで取ったぬいぐるみを抱いて、幸せそうな顔でベッドに転がっているななこちゃん。
俺はなんかもうプッツン来て、トレイを机の上にがしゃりと置いてななこちゃんに歩み寄る。
「男の部屋でそーいうことしたら、どうなるかわかってんの?」
覆い被さるように、彼女の頭の横に手を付く。
ななこちゃんは目をまんまるにして俺を見ている。ベッドに散らばる髪が色っぽい。
「…せんぱ、い…?」
「あんまり油断してっと、食べちゃうぜ。」
そう言えば恥ずかしげに瞳を伏せるから、そのまま口付けた。
「…ッん…ぅ、」
舌を絡ませながら、彼女が抱き締めていたぬいぐるみを奪い取って、ベッドの外に放り投げる。縋るものがなくなった手は、俺の身体を掴んだ。
「…嫌なら、ちゃんと抵抗して。」
そう言って、シャツのボタンに手を掛けるけど、彼女は恥ずかしげに俯いたまま。
こんなボタンを外すだけで簡単に脱げてしまう服なんかで遊びに来たら襲ってくださいと言ってるようなもんだろ、なんて身勝手な言い訳を心で呟く。
そうしているうちにあっさりと辿り着いてしまった白い素肌に指を這わせる。
ななこちゃんの薄い肌は、爪を立てたら破けてしまいそうだった。
「…っ、せんぱ…い、はずかしい…です…」
「…仗助って呼べって。」
答えにならない返事をしながら、胸元に口付けを落としていく。
ひらひらと可愛らしい下着を捲れば、下着なんかよりもっと可愛らしい膨らみ。
もぎたての果実を前にした時みたいに、躊躇いもせずに唇を寄せた。
「ひぁ…っ、せんぱいっ!やんっ!」
「じょーすけ、って呼べたら、離してあげる。」
先端を口に含んだまま喋ると、彼女はびくびくと身体を跳ねさせた。もっと鳴かせてみたくて、空いた手で反対の胸をやわやわと揉みしだく。
「や、あっ、せんぱい、や…っ…」
「なんで呼ばないの?やめて欲しくない?」
それでも名前を呼ばないってことは、もっとして、ってことなのか。
愛撫を続けるけど、抵抗らしい抵抗はない。ただ可愛らしくいやいやと首を振って、鳴いているだけ。
「ちが、は、ずかし…からッ…や…」
名前を呼ぶのなんて、脱がされるのより全然恥ずかしくないと俺は思うのだけれど。
まぁ止めなくていいなら好都合だと、手を胸から滑らせて太腿まで下ろす。
「…じゃあ、やめてあげない。」
「…っやぁっ、んっ…」
下着の中にそっと指を這わせると、もう既に濡れていて。
初めてであろう彼女の反応を見ながら慎重に指を沈めていく。
「…痛くない?」
「…っは…せんぱい…ッゆび、が…ぁっ…」
奥まで指を入れているのがわかるのか、ななこちゃんは嬌声の間に必死に言葉を紡ぐ。
「ん…入ってるの、わかる?」
「やぁ、あ、うごかしちゃや…っ、あ…」
中で指を曲げて擦ってあげれば、可愛らしい声が零れて。あんまり可愛いからもっと鳴かせてみたくて、指を増やしていく。
「…きもちいー?」
「…ぅあ…っん、…へん、な、声っ…でちゃあ、…ッ…」
「かわいーっスよ。…ななこちゃん、好き。」
好き、の言葉に応えるように、きゅうと中がきつく締まる。
声も表情も、吐息さえも可愛いなんて、もうなんか俺はどうしたらいいんスか。
「ひあっ、ん…ッ……」
指を抜いて、枕元からゴムを取り出す。
無防備なウサギちゃんに期待して買っておいたんだけれど、本当に無防備で、もうなんか、たまんねぇ。
「…ね、ななこちゃん、…力抜いてて…」
「…っうあ、…ッく…」
ぐ、と腰を押し付けると、めりめりと割り入っていく感触。ななこちゃんはきつく目を閉じて、必死で俺にしがみ付いている。
「…っは…すげ、…気持ちい…」
温かく絡みつく中に、吐息が漏れる。
下ろした視線の先に、唾液で光る唇があったので、思わず貪りついた。
「…んむっ、…っん…ぅ、んんっ…」
口付けたままゆっくりと抽送を始める。
ななこちゃんの可愛らしい声は次々と俺の唇に飲み込まれて、苦しげに酸素を求める表情も、目尻に浮かぶ涙も全部俺だけのものにしたいと思った。
「ななこ、ちゃんっ…好き…」
「…っやあっ、あっ、ん、」
突き上げる度に唇から嬌声が零れて、好きだと言う度にぎゅう、と締め付けられて。
ただ幸せな快楽に身を任せて、ななこちゃんの最奥で果てた。
「…ななこ、…ッく…!」
びくびくと身体を戦慄かせる俺をぎゅうっと抱き締めて、ななこちゃんは小さく俺の名前を呼んだ。
*****
「…大丈夫?」
「…ん、だいじょーぶ…」
そっと抱き起こして、乱れた服を整える。
氷が溶けてしまったグラスに麦茶を入れて、喉に流し込む。冷たくないけど、とななこちゃんにも渡してあげると、彼女は大切そうに両手で受け取って、「間接キスですね」なんて笑いながら唇をつけた。
いや今までそんなの目じゃないくらいのことをしてたでしょーよ。と言いたかったけど、笑顔が可愛くって、思わず見惚れてしまった。
「最後、じょーすけ、って呼んでくれた?」
「…ないしょです!」
照れる姿がすごく可愛いから、もうしばらくは先輩でも我慢しようかな、なんて。
ベッドの中だけ名前で呼ばれるのも、それはそれでアリかもしれない。
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bkm