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prologue

DIOとの戦いを終えて、戻ってきた日本。
久しぶりの景色はなんだかとても懐かしくて、あぁ僕はここに帰って来たんだな、としっかりと地面を踏みしめようとしたんだけど、そういえば僕は浮いていた。

*****


学校の屋上に座って、風を浴びる。
快晴の空はどこまでも青くて、綺麗だ。
承太郎はエジプトから戻っても相変わらず、ここでサボってタバコを吸っている。

「…空条くん。」

大きな影の側に駆け寄るななこさん。承太郎は視線を上げると、珍しいものを見る目で彼女に言う。

「テメェみたいな優等生が、俺に何の用だ。」

「…聞きたいことが、あるんだけど…」

あぁ、彼女はまだ僕が死んだことを知らないのか。と、その不安そうな瞳の色から察する。
承太郎、お願いだから彼女が泣かないように上手く伝えてくれよ、と思う。気付かれないようにそっと二人の背後に回り込んだ。
彼女は承太郎の隣に腰を下ろす。いささか近すぎやしないかと思ったけれど、僕には二人を離す術がない。

ななこさんは、承太郎の隣に座って何やら話し込んでいる。
承太郎は帽子を下げてしまって表情は見えないし、ななこさんも俯いて小声で話しているから、ここからじゃあ聞こえない。

「…嘘…ッ…!」

悲鳴のような一言だけが、僕の耳に届いた。
ななこさんはぽろぽろと涙を零しているのだろう、小さな肩が揺れている。承太郎は宥めるようにその大きな手で彼女を撫でた。どさくさに紛れて触るなよ承太郎。

しばらくして、ななこさんは立ち上がり涙を拭う。そうして小さく「教えてくれてありがとう」と承太郎にお礼を言って屋上を後にする。すれ違い様に声を掛けようとしたのだけれど、ここには承太郎がいるし、一人の時にしようと彼女の背を見送った。


*****


僕には好きな場所がある。まだDIOに操られていた頃、承太郎を待ち伏せていた階段の横。木陰があってなかなか快適なそこに腰を下ろす。考え事をするにはもってこいだ。
エジプトに行く前と変わらないはずの景色を眺めながら、ななこさんのことを考える。

彼女には果たして、僕が見えるだろうか。

ななこさんが階段を降りてくる。
目元が先程より赤い。
泣かないで、僕はここにいるよ。

「ななこさん。」

階段を下りきったところで声を掛ける。
彼女はひどく驚いた顔でこちらを振り向いた。

「…ッ…花京院…くん…!?」

「…見える?」

僕と彼女の視線がしっかりと絡んでいることに安堵する。どうやら彼女には僕が見えるらしい。まずは第一関門突破といったところか。

「…ど、うして…」

驚きに見開かれた瞳が、みるみるうちに涙を湛えていく。どうして、と彼女は何度も呟いた。

「…君のところに、戻りたかったんだ。」

そう答えると、彼女は僕に向かって手を伸ばす。僕も同じように手を差し伸べたけれど、指先は触れることはなく、不思議に重なり合って落ちた。

「…花京院くん…」

「そんな顔しないでよ。僕は君に会えて嬉しいんだから。」

悲痛な面持ちの彼女は『僕が死んだ』ことを嘆いていて、とっくに死んでいる僕は『彼女に会えた』ことを喜んでいる。
この温度差が埋まるには、まだしばらくかかるだろうか。

とりあえず僕は、彼女に一番言いたかった言葉を告げた。







「…ただいま、ななこさん。」










こんな感じですが、ついてこられますか。
大丈夫ですか…?


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm