「仗助くん、大事件だよ!」
「ななこ、どーした!?」
バタバタと走って仗助くんを呼ぶ。彼は私の勢いにびっくりして、身を固くした。事件か!?みたいな。
「リーゼントってそこじゃないんだね!!」
私は仗助くんのおでこの上の、いままでリーゼントだと信じてやまなかった部分を指差す。
「…へ?…なんだって…?」
特段なんでもない話だったことに拍子抜けしたのか、それとも仗助くんも知らなかったのか、きょとんとしている。
「リーゼントは頭の後ろ部分だって!前はポンパドールっていうらしいよ!」
もうそんな真実、大興奮だよ私は。
リーゼントって聞くとキリッとかっこいいけど、ポンパドールっていわれるとなんだかふわふわした犬みたいだよ!
「…お、おう。」
「だからどうした。うん、だからどうした。
いや大事件でしょうこれは!お父さんだと思ってたらお母さんだったくらいびっくりだよ!仗助くん!私どうしたらいい!?」
あわあわと慌てる私を見て、仗助くんは盛大に吹き出した。
「いや、わけわかんねーし!どうもしなくていーよ。」
身体を折るようにしてプルプル震えている。
腹を抱えて笑うってこれか。
「え、だって!リーゼントが!!」
「…はいはい。落ち着け。」
ぷくくく、と吹き出しながら頭をぽんぽんと撫でてくれる。
「…おちついた。」
「おもしれー。…ななこさぁ、俺の髪型好き?」
目線を合わせて、子供に言い含めるみたいに問いかける。まだ吹き出しそうな雰囲気ではあるけど。
「うん、好き!大好き!!!」
力強く頷くと、仗助くんはにっこりと笑った。
「だったら、それでいーじゃねーか。別にリーゼントでもポンパドールでも俺は構わねーぜ。」
「…仗助くん…」
かっこいい!と叫んで飛び付くと、よろけもせずに抱き留めてくれた。
「…惚れ直した?カッコイイ?」
「うん!カッコイイ!」
ぎゅうっと抱きついて、頬に口付ける。
仗助くんはそんな返しがくると思っていなかったらしく、面食らったのちに頬を赤くした。
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bkm