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プレゼントはプライスレス

花京院が最近冷たい。
新作のゲームが出たわけでもないのに、放課後は遊んでくれないし。
それどころか一緒に帰ってもくれない。

「他に乗り換えるつもりなのかなぁ…」

「いや、それはないぜ。」

花京院の代わりに何故か一緒に帰ってくれる承太郎がキッパリと言い放つ。
何か知ってるんだろうけど、彼は頑として教えてくれない。

「…送ってくれてありがとね、承太郎。」

「あぁ、またなななこ。」

ご丁寧に私が玄関に入るまで見送ってくれる承太郎。
花京院に頼まれてるんだと思うんだけど、何かあるなら言ってくれればいいのに。


*****


「ななこ、誕生日おめでとう!」

明くる日、教室で友人に言われて思い出した、私の誕生日。
花京院のことばかりで、忘れてた。

…花京院、メールもくれなかったな…としょんぼりしたところで、先生が来た。

*****

その日は一日中何も手に付かなかった。
心ここに在らずってこういうことなんだなぁ…とか今日は承太郎来ないなぁ、とか放課後の教室でぼーっと考えていると、視界の端に見慣れたピンクの頭が見えた。

「…ななこッ…誕生日おめでとう!」

走ってきたらしい花京院は、小さな包みを私にくれた。

「…覚えててくれたんだ?」

「当たり前だろ。開けてみてよ。」

花京院に見つめられながら包みを開けると、小さな緑の石がついたペンダントが入っていた。…エメラルド、だったかな。

「…きれい…ありがと…」

溜息が出るほどキラキラしたそれは、私のお小遣いじゃ絶対買えないと思う。

「ななこに似合うと思って…頑張ってバイトしたんだ。最近一緒に帰れなくてごめん。承太郎から聞いてたんだけど、どうしてもこれをプレゼントしたくて…」

私のために頑張ってくれたんだと思うと嬉しい、けど今までの憂鬱を考えたら素直に喜べない。

「…花京院のゴミあき。嫌われちゃったかと心配したよ…」

プレゼントはすごくすごく嬉しいけど、
毎日一緒にいる方がいいと、私は思う。
花京院がいない間、すごく心配だった。寂しかった。

「うわぁ…ひどいなあそれ…僕頑張ったのに…」

困ったように笑う花京院の顔を久しぶりに見た気がする。大好きな声も、久しぶりに聞いた。

「…これからなんにも言わずに毎日先に帰って、土日も会えなくてもいい?」

頬を膨らませながらそう質問する。
花京院が私にしたことは、私から見ればつまりそういうことだ。
私は毎日一緒にいたいけど、もしかしてそうじゃないんだろうかと不安になる。

「…それは…嫌です…」

しゅんとする花京院を見て、少しホッとする。でも、一体どれだけ頑張ってくれたんだろう。

「私のために頑張ってくれたのはすごく嬉しいんだけど、…一緒にいてくれる方がいいな。」

なんだか愛の告白みたいで恥ずかしいけど、
また今回みたいに会えなくなったりするのは嫌だ。

「ごめんねななこ…寂しかったんだね。」

すまなそうに頭を撫でてくれる花京院。
でもとても喜んでいるらしい。本人は気づいていないんだろうけど、微妙にニヤついている。

「プレゼントはモノじゃなくて気持ちなんだからねっ!」

恥ずかしくて撫でてくる手をペシッと払いのける。

「…あ!じゃあ僕の将来もつけるよ!どう?プライスレス。」

いいこと思いついた!と言わんばかりのテンションでとんでもないことを言い放つ。
そんな大切なもの気軽につけちゃっていいのか…。

「…絶対だからね?」

意外と天然な彼の気が変わらないうちに念押ししておく。

「うん。あ、来年からのプレゼント、ハードル上がるなぁ。」

困っちゃうね、なんて照れたように笑っている。確かに、彼の将来をもらってしまうとなると、他に欲しいものなんてない。むしろ私は何をあげたらいいんだろう。

「それ、暗に私へのプレッシャーでしょ。」

『花京院の将来』に見合うお返しはなんだろう…私の将来じゃ芸がないし…、と考えていると、彼はイタズラっ子のように笑って言った。

「あ、バレた?…じゃあ次はななこの処じょ…」

「うるさいゴミあき!!」

言葉の意味がわかるや否や彼の胸を叩く。
やだこの人恥ずかしい。
私の初めてと花京院の将来は、どう考えても釣り合わないじゃん。

「…ひどい…」

泣き真似をする彼の口元は楽しそうに歪められており、完全にからかわれている。
顔が熱い。きっと私の頬は真っ赤になっていることだろう。

「…ま、考えてあげないこともない…」

素敵なプレゼントのお礼には足りないかもしれないけど…と呟くと、目を見開いた彼にガバッと抱きしめられた。

「…ななこッ!それは本当かい!?」

あんまり嬉しそうに笑っているもんだから、私は頷く以外の選択肢が選べなかった。


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm