小説 | ナノ

 僕たちの帰る場所

数十年前に交わした約束とか、小さい頃にしてもらった思い出とか。
とにかく忘れない思い出というものはある。
とても些細で、さりげなくて、どうでもいい。
そんな程度の欠片が集まれば大きくて大切な荷物となった。
彼もその一つ。

「銀河って、銀河の中だとどう映るの?」
「同じさ。位置が違うだけで右も左も銀河になる」
「綺麗だね」
「一時的には綺麗だが、そればかりだと地球が恋しくなるもんだぜ」

ふーん、と鼻を鳴らすと、虫の鳴き声が聞こえる。
草木の寝静まる静かな草原。目の前にあるのは天の川。
寝転ぶと草木の青い香りが鼻先を霞めて、とても心地がいい。そんな所。
膝の上に頭を乗せて、時折撫でられながら一緒に見上げて。2人はゆっくりとその時間を楽しんだ。

「くすぐったい」

膝の上に乗る頭を一度上げて、今度は少し上に移動してみる。
胸のあたりに頭を乗せると、彼はなんてこともなくまた、静かに撫でてくれる。

「いいよ」

そして返事をした。一度撫でる手が止まったが、すぐに撫ではじめてくれて。かすれた声で彼は聞いた。

「良いのか?」

小さな深呼吸の後、声を出さずに頷く。着物を握りしめると、今まで撫でていた手は肩へ移動して強めに自分側に押さえつけてきて。もう一度銀時は声を出し。

「連れてって」

そこでようやく高杉は起き上がった。銀時ごと起こして、背中に両手を回し優しい包み方をしながら抱き締めて。額に軽い、押し当てるだけのキスを落とすとまた抱きしめた。銀時の眼は、憂いもあり愛しさもある。少しだけ潤んで、ニコリとほほ笑んだ後高杉の胸元に顔を押し付けた。

「晋助と一緒なら・・・どこでもいい」

小さな頃晋助からもらった金平糖がさ、星みたいで大好きだったんだ。そしたら言ってくれたんだよ。これからもお前に星をくれてやるよ≠チて。は?忘れた?ふざけんなよ、その顔絶対覚えてるだろ。顔ニヤけてんぞ。おい、ちょっと見せてみろってば。お前絶対覚えてるだろ。知らねぇとは言わせねえぞ!何笑ってんだ馬鹿!

それでも手を離さないで草原を真っ直ぐ進んでゆく。
引かれながらプリプリする銀時と、楽しそうに笑う高杉。
空へ導いてくれる船までもうすぐ。







++++アトガキ++++
何だろうこれ。一応影山ヒロノブさんの「銀河の星屑」イメージしたのに、小松未歩さんの「氷の上に立つように」になった気がする。全然イメージ通りじゃないorz(title:彼女の為に泣いた様)
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