小説 | ナノ

 惨めな快楽主義者

もう駄目。今なら俺死ねる。

そう返信してから日が経つ。

ここんとこ3日程夏風邪に苛まれ死にそうだった。外でも中でも蒸し暑くて頭は痛い熱は下がらないという最悪な状態だった。本当に苦しい三日間だった。そんな中「大丈夫か」と送られたメールに「今なら俺死ねる」と返した。その後薬が効いてようやく元に戻ったのだが、神楽や新八が病み上がりが一番危険なのだから、今日も依頼休んで下さい。と言われ一人ぼっちで留守番中である。

依頼なんて珍しい。

そういえば、こんな感じで熱を出していた時も依頼が重なり自分が出られない時があった。神楽と新八が浮気調査をやってのけていたが。そう思うと更に億劫になる。

「何?銀さんが熱出したら依頼くるパターンなの?」

片足を投げ出しながらソファにゆったりして休んでいると、ドタバタと階段を駆け上げる足音。子供達じゃない、足音は一つだ。それとも、どちらかが忘れ物でもして急いで上がってきているのだろうか。そんな事を考え、やってきた相手に嫌味の一言でも吐いてやろうと待機していたら、姿を現したのは意外な人物であった。

メールの相手。

高杉。


呆気に取られた。

肩を上下に揺らして、息を整えようと必死の高杉は酷く焦燥していたのだ。

わざわざ地球までやってきたのか?何の用があって?

色々考えたが、こんなに必死な顔をした高杉なんて本当に珍しかったので、銀時も何も言えずお互い見つめ合った。

間を置いて、高杉はソファに寝転ぶ自分の前にやってくると、携帯電話を取り出して腹辺りに投げて来たのだ。携帯電話を馬鹿にしてはいけない。あれは精密なからくりで最新の技術が詰まった優れものである。最近の機種は軽く薄いと評判ではあるが、ほんの少し前の携帯電話は今のと比べると断然重みがある。

それを、高杉は銀時の腹部辺りにぶつけて来たのだ。思わず鈍痛に呻いて、呻いているその最中こちらの事等目もくれず胸倉を掴んで揺り起こす。

「いってえ・・・!ふざけんな何なんだよテメエは!」
「それはこっちのセリフだ馬鹿野郎!!」

高杉の激怒っぷりといったらもう。一度怒られたら訳が分からなくなり途端に言葉が詰まる。腹の上に転がった自分の携帯電話を拾い、代わりに自分は解放され再びソファの上に寝かされた。

「簡単にもう駄目とか、死ぬとか言うなよ・・・」

そう小さく言われ、ようやくメールの事を思い出したのだが。
言葉のあやじゃん、って言ったのに高杉の顔は辛そうで。謝る事しか出来なかった。

「ごめん」
「・・・風邪はもういいのか」
「昨日治った」
「生きてんだな」
「み、見りゃ分かんだろ」

何で自分が簡単に言った言葉にいちいち怒られたり、マジになられなきゃいけないのだろう。高杉だって、同じ事したり言うくせに。口を尖らせて向かいのソファに座る高杉は、本当に疲れていて淹れた茶も喉を鳴らして飲み込んでいて。

高杉だって「死にそうだ」とか「死ぬ」とか「くたばりそうだ」とかメールしてくるのに。

「晋助だって、死にそう、とか言うじゃん」
「テメエが言うとマジに聞こえるんだよ。ボケが」

風の向くまま気の向くまま。

「おもしろき こともなき世を おもしろく すみなしものは 心なりけり」の快楽主義者のこの男が、惨めに自分の言葉一つで焦っているのだ。

「ばあか」

銀時は小さく返してみると、高杉はその天パを夢中にモシャモシャと荒く触って来たのでやだやだと嫌がった。







++++アトガキ++++
思考回路はショート寸前。自分が死ぬ言ってもいいけど銀時は駄目っていう。
ただの熱愛やってる高銀でした。すみません。(title:彼女の為に泣いた様)
++++++++

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