小説 | ナノ

 私の身体をあげるから貴方の心を頂戴

恋をしたのは自分の方だった。
いつもいつも危険な匂いがする奴が好きらしくて、俺はそんな見るからに危なっかしい怪しいオーラを放つ男に惹かれてしまう。
土方もその一人だった。

咥え煙草に鋭い鷲のような眼光。自分とは違う、人間らしい黒髪をなびかせ刃を抜く。
もしくは只彼を反映しているだけのような気もしていたが、自分はそれが土方が好きという感情に溺れてしまっていた。
「恋は盲目」とはよく言ったものだ、それが今の俺に当てはまる。
子供達が今の状態に外野からぎゃーぎゃー言ってくるのをまともに聞いちゃいなかった。本当に「恋は盲目」状態。

もう土方が大好き。

アプローチをしたのも俺。だけどあいつは嫌がるばかりか、その手を振り払うのではなく受け取ってくれた時の衝撃と言ったら。乙女か、どこの少女漫画のヒロインだって思ったけれど。全身に何かが突き抜けた。

もう一緒にいるだけでドキドキする。
手を繋いでくれたり、一緒に酒を酌み交わしたり。

「銀さん。人の恋路にどうの言う権利は僕等にはありませんけど、土方さんだけは止めた方がいいと思います」
「そうアル。あいついつも銀ちゃん事独り占めヨ」

そう横で言っていたけれど。家族は家族で好きだし、土方は土方で好きだから。
どっちも大好きって言ったら怒られた。

横から文句ばかり言ってくるのがガキ等だけじゃないのが気に食わない。最近、ヅラも何か言い出し始めてくるから蹴りを入れておいた。

「元攘夷志士が警察官とイチャコラなんぞお母さんは認めませんからね!」
「何お母さんなってんのよ」

土方とこの前、キスもしちゃった。
だから俺は上機嫌だったんで蹴り以上の暴力はしないで置いたけど、最後までヅラは俺に声を呼び続けた。手を煽いで、ずっと俺の名前を呼んでいたけど。

俺は土方と会う用事があったから、そのまま走った。

副長さんは忙しいからストレスを多く抱え込む。
だから、俺が一緒にいても愚痴やものに当たる事がよくあった。
それでも俺は土方が大好きだから、暴れ回った後ぼうっとした所を慰めるとすがりついて謝ってくる。

「ごめんな、ごめんな銀時」

何度も「いいよ、大丈夫だから」って言っているのにだ。
俺が大丈夫、大丈夫って答えてるのに何も聞こえていないのか、土方はひたすら謝った。
その後のキスは物凄く熱くて、ビックリする位に激しかった。

俺等は男同士だから、本当は「好き」って気持ちを明かす事さえおかしい事だから。土方にアプローチしまくってる最中はドキドキしまくってた。「こんな事しておかしいって思われても仕方がないのに」って不安でいっぱいで。「気持ち悪い」って言われてもおかしくなくて。
だから身体の関係になる事も本当は二の次だったから、あんなに求められて幸せだった。強引に着流しを脱がされて、噛み付くような愛撫も受けて。「あれ、俺こっち側なの?」ってビックリしたけど、女役は慣れてるから同じように抱き締めて応えた。
さっき噛み付くような愛撫って比喩したけれど、今物凄く強めに噛まれた。
勿論痛かったけれど、それも恋の痛み?みたいに変換したら噛まれてるのに幸せになった。

無理させたくないから、休みなよって言っただけなのに。

「誰がこの町の安全を守ってやってるんだ」

って返されて何も言えなかったから。そんなしどろもどろしている俺にイラついて当たっただけなのに。ちょっとどつかれただけだ、ものをぶつけて壁に当たって、周りが散らかっただけだ。

「昨日誰と会ってた」
「どこの男と遊んでた」
「このあばずれ」

それだけなのに。どうして土方は悲しそうな目で俺を見るんだ?

分かってるよ、俺は土方だけだもん。
土方だって、始めはしつこかった俺のアプローチに根負けしてくれた人だから。
本当に感謝してるんだよ。

噛み付かれた場所が痛くても。
ものをぶつけて当たった所が腫れて、痣になっても。

だけど俺は「昨日誰と会ってた」、「どこの男と遊んでた」、「このあばずれ」には本当に何も言えなかった。最近土方が俺を心配して連絡を入れてくれるってのに。
答えられなかった。それは俺が悪いと思ってる。

土方にそう言われたあの日。
俺は高杉に呼ばれていたから。

「あいつと付き合うのは止めておけ。お前の身体の痣増えてんぞ」

痣?
いいんだよそんなの。
これもあいつとの愛の証みたいなもんだろ?

幸せすぎて笑って帰ったよ。







++++アトガキ++++
銀魂休暇(シルバーウィーク)に家に泊まりに来た鬼編集者アリカとふざけて
土方→私、銀時→アリカ
で言い合っていたら本気になってきたものをメモにして起こしてみました。
(title:彼女の為に泣いた様)

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