小説 | ナノ

 それは甘い苺味でした

ある日。本当にある日。どうでもいいいつもの繰り返しのある日だ。
突然呼び鈴もノック音も何もなく、玄関が開かれズカズカと不法侵入する足音が複数。
ソファで寝転んでいた銀時はまどろみの時間を強引に奪われ、そして驚いて飛び上がった。字の如く。何だ何だと不審に思った矢先に彼等は目の前に姿を現して、周りに新八と神楽、大きな犬がいる事を把握。そして目の前には寝起きで驚き目をパチクリしている白夜叉を確認した。

「何なのお前等!つーか人んちにずかずかとノックも何もなしに上がっていいと思ってんですかコノヤロー!真選組に通報しますよしちゃいますよちょっと!」
「よし白夜叉確認。万斉さん拉致の方宜しくお願いします」
「承知したでござる」
「ぎゃあああ!!」

有無を言わせず銀時は持ち上げられて、担ぎ上げられた。神楽や新八が騒ぐ中また子が「落ち着け」と両手を見せて制し説明する。

「今日は晋助様の誕生日っス。その為に白夜叉を借りてきますんでそこんとこ宜しく」
「全然宜しくじゃないいいいいい!!」
「じゃあちょっと鬼兵隊に来て欲しいって依頼にしておこう」
「断るから!行きたくない!金いっぱいつぎ込まれても承りませんんーー!!」

しかし家計が苦しいのを知っている子供達。銀時が一日過ごせば帰ってくることを把握した2人は快く社長の意思等無視して金を頂き、代わりに銀時を受け渡した。その光景を万斉に担ぎ上げられ、上下逆の世界で見送った銀時は絶望する。

「お前等見損なったぞコノヤロー!!」

隠して銀時は鬼兵隊の船へ連れて行かれる事に。その車の中で打ち合わせを聞かされる。武市から手渡された台本にはシナリオが組まれていた。それを一通り眺めた銀時は丸めて変態に向けて投げ返し激昂した。

「ふっざけんなよ!!何で俺がこんな格好しなきゃなんねェんだよ!」
「何をおっしゃいますか白夜叉。かまっ娘倶楽部前でミニチャイナドレスやセーラー服のコスプレフェアに参加して客寄せしていた事は把握済みです。さぁこれを着て晋助さんを喜ばせて下さい」
「ゴツいおっさんが着てもキモイだけだわこんなゴスロリ衣装!!」
「いや大丈夫ですよ。あなたのような受け素質の主人公は何でも似合います。そういうデータがあるんです。あなたなら絶対似合ますし需要もありますから」

手渡された紙袋の中には真っ黒に染まった布。白レースと白フリルがあしらわれたゴスロリ衣装一式。触れる事さえ躊躇してしまうとんでもないものを見せられて思わず顔が引き攣った。

「何でこんな事しなきゃなんないの・・・」
「それは今日が晋助さんお誕生日だからです」
「いやだから何で俺がって聞いてんだよハゲ散らかされてーのかハゲ!」
「ハゲじゃないまげです。いやいや白夜叉なら似合うから。ちょっとここで試着してみなさいって。あんた美青年なんだから綺麗に着こなせるから」
「触んなってオイ!!ちょっとテメエどこ触ってんだコラ!」

乱闘する合間に空しく車は進む。やがて到着した海岸には大きな船が停泊しており、見覚えのある銀時は固まった。

「白夜叉。入ったらそれに着替えて晋助の前に出てくるでござる」
「また子さん、カメラの準備は整いましたか?」
「万全っス先輩!」
「あんたら何でそんなにノリノリな訳よ」

船の中を案内された後とある部屋に案内された。その中で着替えろと言っているらしい。睨みつけたりグチグチ言っても後戻りはできないぞと言われ、途方に暮れた銀時は泣く泣く着替える事にした。一人では着替えられないので万斉とまた子が手伝ってくれ、武市はそんな着替えの様子をビデオカメラに撮っている。睨みつけたり歯ぎしりをしてみても流石変態。今更怯みはしないのか淡々と録画し続けている。

かくして出来上がったゴスロリ姿。
チョーカーで喉仏を隠し頭にはヘッドドレス。黒いニーハイには白レースの装飾があしらわれ、パニエでスカートを大きく広げたレースとフリルいっぱいのゴスロリが完成した。
泣き出しそうな顔を向けられたが無視して部屋を移動。
目の前には、高杉がいるとされる自室。

「さぁ白夜叉、これを持って」

手渡されたのはケーキ。とてもおいしそうでじーっと見つめているとまた子は囁いた。

「その姿で晋助様に手渡すっス。ケーキは勿論食べてもいいっスから」
「うっ・・・!食い物でつられたりなんかしないんだからね!」
「いいっスねツンデレ!萌えます!」
「ツンツンなんかしてねェ!」

慌ててまた子が口元に人差し指を突き出して「しー!」とジェスチャーして、銀時だけが残された。影から撮影するまた子、録画し続ける武市、ゴーサインを向ける万斉。口をへの字にして諦めて、なんでこんな事しなくてはならないのかと絶望しながら銀時はふすまを足でひっかけて開けた。

「晋助〜はっぴーばーすでーつーゆ〜〜〜」

棒読みでドスドスと入ると窓際で煙管を持つ高杉を見た。
こちらに視線を向けるや瞬時に塊り自分を凝視。

数秒空気が固まった。

「・・・・・・・・は?」
「は?じゃねえよ。俺の方がは?だよ」
「えっ・・・いや・・・なんだその格好」
「知らねェよ!俺だって好きで着てる訳じゃねえの!!ケーキ食っちまうぞコノヤロー!祝ってやってんだから喜べコラア!」
「いや、あの・・・この年で祝われてもな・・・」
「俺の苦労と悲しみを汲んで喜べバカヤロー!!」
「なんだ、ツンデレか」
「これのどこがツンツンだ!怒ってんだよ俺は!」

勿論高杉はケーキ等目もくれずゴスロリ銀時の方を食らい、腰を痛めて散々な目に遭ったと言いながら万事屋に帰宅。
そんな銀時の元に、数日後自分のゴスロリ姿の写真集と上手に編集されたビデオがDVDに焼かれて郵送され、同封された手紙の追伸には「Youtubeにアップロードされたくなければ来年もよろしく」という文面を見つけた時は踏みつけて憤怒した。

「金輪際あいつの誕生日なんか祝うかボケ!!」





++++アトガキ++++
高杉さんお誕生日おめでとう\(^o^)/
(title:檸檬齧って眠る様)

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