小説 | ナノ

 トレイン、トレイン

「やったアルな銀ちゃん!一週間京都巡りの旅チケット!流石アル!」
「応募した覚えないんだけどな、なんだっけかなぁ」
「ジャンプのアンケートとかでも書いて送ったんでしょ?」
「うーん、まぁ心当たり思いつかないんだけどまぁいいや」

現在万事屋一向は電車の中。そんな会話をしながら目的地へ向かう。ある日銀時宛てに贈られた封筒の中には京都温泉巡りの旅当選の知らせを通知するA4紙と、温泉旅館へのチケットが数枚同封されていた。しかし銀時には心当たりがなく、新八が言うジャンプのアンケートを書いて送った景品かもしれない。しかし限定的な地区であるし、と疑問に耽りながら銀時は揺られる振動に身を任せた。すでに3人が乗り込んだ時座れる場所はなく、幸い開いた折子供たち2人を4人用の席に座らせた。自分は揺られながら立って目くるめく景色を眺めてあくびをする。荷物を置こうと思ったが上を見てみるとすでにそこには沢山のバッグや旅行バッグが詰め込まれていたので、それぞれの荷物を膝や足元に置かせ、自分の荷物を詰め込んだバッグは足元に置き、足で挟んだ。

「温泉温泉」

神楽は上機嫌で、新八は遠出なので帽子をかぶってきている。ペットを置き去りにするのは忍びないのだが、ペット禁止な温泉ばかりなので最後までそこを留守にするのが忍びなかったと思い出す。その代わり定春にはお土産を買って来ようと思っている。

時間がかかるので神楽と新八はうつらうつらしてきた。電車は鈍行列車場合時速70キロで運行する。人がまどろむ速度も70キロだと聞いた事があった。先に神楽が寝て、次に新八ももたれながら寝てしまった。銀時はよだれを垂らす神楽の口元をハンカチで吹いてフ、とほほ笑む。

クソガキ共め。と小さく言いながら大きな荷物を足で挟みながら元の位置に戻った。

どれ位経っただろうか、随分と長い時間揺られ続けた。重ねて、乗り込む人も増えてきてどんどん動きが制限されてゆく。足で挟んだ荷物をより強めに寄せてみたが、これ以上荷物が狭まる訳でもないのか無駄なあがきだった。

「うげっうぐぐ、キッツ」

人がどんどん入ってくるが自分らは動けない。思いもよらない人口密度に銀時は悲鳴のような唸り声を上げた。しかし電車の入り口はそのまま締まり発進する。なるべく身を乗り出して窓側に突き出たが意味がないらしく、銀時は揺られる振動と、身体を密着される圧迫感に押し込まれた。目的地までまだ時間があるので苦しい空間と付き合わなければならないのかと思うと嘆息しか出ない。
忙しなく流れる車窓からの風景を眺めていると、ふともぞもぞとする感覚がこみ上げ銀時は身をよじらせた。臀部を中心に何かが当たる感覚があったのだ。荷物でも当たっているのかと思い狭い空間を何とか動いてそれから逃げたがまた数分も経過すると何かが当たる。荷物を足で挟んでいるのでこれ以上閉じる事が出来ない。その半端に開いた足をさするように何かがふと当たり、腰なんかをさすってくる。蠢く感覚がしたので物ではないと直感した。振り返る事が出来ないが懸命に首を動かしてみて確認すると、やはりそうだと更なる確信を得る。

間違いなく、人の手だ。

――えぇー・・・俺の尻女の子の尻だと勘違いしてんの?これ触ってる人。あり得ないんですけど、マジあり得ないんですけど。ないよないよ。これ男の尻だから触ってる人。つーか痴漢は犯罪だからね!犯罪ですから。通報しますよ、警察呼びますよちょっと!

とりあえず新八を起こしてみようと手を伸ばす。少年を起こして後ろから伸ばす手をどうにかしてくれるか等と言う解決策を求めているのではなく、この状況を遠まわしになんてことのない会話をしながら「今自分が触っている尻は男の尻だぞ」という小さな警告をしてやろうと思ったからだ。「なんか尻に違和感あるんだけど。気のせいかもしんねーけど」とか言ってしまえば、相手もそれでこの尻が男のだと把握する。それで痴漢行為が終わると踏んだのだ。手前に座ってくれていて本当に良かった。もし新八が神楽が座る窓が話だったらなす術がなかった。

「新八、新八」

声をかけてみて、んあぁ。と寝ぼけ眼で起きる新八に銀時は勝利の笑みを浮かべる。銀時はこの時点でニヤリとした。

「ん・・・もう着きました?」
「や、まだなんだけど、それよりもちょっと聞いてよ」
「うーん・・・」
「ちょ、また寝ようとしないでってば新八くぅん!ちょ、俺の尻触ってる人いるんだけど。なんか俺さわさわされてるんだけど」
「気のせいじゃないんですかぁ?ふわぁぁ・・・」
「ちょ、テメっ寝るなって!もうちょっと起きて話し相手なってくれないィ!?だーもう、使えねぇ眼鏡だなテメエ!」

新八はそのまま神楽と同様俯いて眠ってしまった。最悪だ。しかし意思表示というか警告は発する事は出来たので一応は作戦通りとも言える。それに新八に痴漢されてるかも、と口にした時ふとその手は動きを止めて引っ込んでくれたので多少効果はあった。だが新八が再びぐーすかと揺れに任せて時折肩を揺らすのを見ていたら、また相手も動きを再開してきたのである。
銀時は悟った。こいつ触れられるものであれば男でも女でも構わないのかも知れない。もしかしたら相手は、そっち系もイケるクチのタイプかも知れないと。

――うわあぁ最悪だよもぉおおおお!なにこいつ!股にちんこついててもいいのぉ!?穴がケツか開いてねえ相手触って何が楽しいのぉ!?やだ最悪だよおおおお!

最悪の事態に青筋を立てる。何故なら、先ほどの嫌な予想と、更に大胆さを増してくる手つきから逃げる術がなく、身動きができない自分の状況は明らかな不利を示していたからだ。
腰や臀部を撫でまわす手は奥へ進んでくる。荷物を挟む足のせいで閉じられないのだ、開いている股に指先を進めるのは容易な事だ。閉じようともがいてみても荷物のせいで足がこれ以上閉じれない。クイ、クイっと折り曲げた指先は、上を突き上げるように布を押し上げてくる。ヒクリ、と腰を突き上げて反応をしてしまった事も勿論相手は分かっているのだ。それが恥ずかしくて、銀時は頬をほんのりと染めた。

反応してしまうのは仕方がない。手を叩かれれば「痛い」と引っ込めて庇うのと同じだ。触れられて反応してしまうのも仕方がない。そう心の中で何度も動転する思いを落ち着かせようとするものの、その最中にもどんどん指先の動きは激しくなってくる。少しづつ、本当に少しづつ。銀時自身もそれに答えるように起き上がってくるのが分かっていた。今すぐどうにかしなければ、布の中へ、下着の中にまで侵入でもされてしまえば。結果は最悪だ。

「ん・・・」

布越しから菊門を撫でまわされる。円をかくようにくるりくるり、行ったり来たり。耐えようと腹に力を入れるも、喉を伝って空気を吐き漏れてしまう。完全に相手のペースに乗せられていてこのままではマズいと危機感に苛まれる。布越しからグイグイと指が一本、押されてきて口元を手で抑えた。
クルクルと円を描くように撫でられたせいでそこの筋肉が緊張をほぐし緩くなってしまっている。布越しとはいえ、指一本の侵入を許しそうで必死に力を込めた。それと重ねて前に腰を押し指先から逃れようとするとそれを待ち構えていたのか、前にはもう片方の手が着流しの隙間から侵入して前を撫でて来た。後ろに尻を押し込めば尻の間を割って指先が待ち構え、前へ進めばそこにも撫でまわす手が待っている。
目を泳がせてどうしようどうしよう、とパニックに陥り再度新八を呼ぼうと身をよじろうとしてとっさに止めた。

チャックを下げられた。

とりあえずその手をバシっと払いのけてみるが、それでも諦めずに侵入してくる。トランクスの布地とパンツの二枚越しと比べるとまだマシだったが、直接トランクスの上から撫でられるとたちまちそれは完全に起き上がってしまっていて、いつも以上の熱を帯びていた。触られて反応しちゃうのは仕方がないんだから、と言い聞かせてみてもそれとは裏腹にあり得ない、と恐怖と快感のせいで妙な興奮が増していた。
右側に開いた着流しの隙間を割って入るとチャックを器用に下げ入り込んでくる右手は勿論利き手なのだろう。撫でまわし時折突き上げる菊門と重ねて両方を弄られ、頭の中がパンクしそうになった。

「うぅ・・・ふ、」

ビクビク震えだす腰や、太股に気が付いたのか。
チャックからふと手が抜けだされ「終わった」かとひと安心するも、それは予想だにしない行動だった。チャックの上をもぞもぞと動き回ったかと思うと、腰で止めている紐を解きだしているのだ。蝶々結びにしてあった腰ひもはあっさりと解かれ、着流しで隠れているとはいえパンツと下着、両方をすり下ろそうとして来ている。流石にそれは駄目だと両手でそれを阻止しようと抵抗した。下げようとする手を両手首を掴んでつなぎ留め、必死に小さな抵抗をするとグイグイと足膝が股間を押し込んできて、掴んだ手首を逆に掴まれ、後ろでに取られ固められた。

「ちょっ・・!」

片手で自分の両手を束ねられて抵抗のしようがなくなり、パニックしているのをあざ笑うかのように相手は器用に片手で続きを見事にこなし、腰元を晒されたせいでブルリと身震いをした。

――ヤバイ、ヤバイってどうしよううわああああ足閉じられないし両手塞がってるしうぎゃあああああ!!

直接指先が触れられた時、その予想だにしない冷たい指先にビクリと震えた。
性器の先端からは汁が漏れだし、それに指先を絡めると後ろに移動し、菊門へ塗りこめ。その先は予想できていても、銀時は逃げる事も抵抗する事もできなかった。ただ、深呼吸をした後息を止めて腹筋を酷使し、指先が侵入されるのを少しでも防ぐだけ。腰をくねらせ右に左に行ってみても簡単に一本、指が侵入するのを容易に許しヌルリと痛みもなく入ってくるそれに声が漏れそうになるのをまた腹筋を使って緊張して必死に耐えるだけ。しかし耐えてはみるものの、侵入しグネグネ蠢く生き物のようなそれに耐えきれず固く閉ざした口からは嬌声が漏れ出した。
重ねて、背後からは相手の膨らんだ股間を押し付けてドキドキと心拍が上がってくる。バクバクする心臓が煩くなった頃。

「うぁあ・・・・っあ・・・」

聞かれる、聞かれる。聞かれてバレてしまうかも知れないのに漏れてしまう。
小さな穴から漏れる腸液が潤滑油と、簡単な挿入を許したが慣れていない久しぶりの挿入に慣れておらず痛みと共に波が押し寄せて来た。


熱い。
熱い。

翻弄されてしまう、嫌なのに。

グン、グン、と奥へ進み根本まで押し込んでくる圧迫感に腹部が蠢いた気がした。もう耐え切れないのに閉ざすだけでは漏れ出す嬌声をどうにか止めたくとも、それを補う手が使えない。ギリリ、と歯ぎしりしても耐え切れなかった。自然に足元が快感に震え、背後から前後に突き出されて息遣いも激しくなってしまう。

「んぐっ・・・、ふ、ぅうっ」

引いては押し出してくる肉棒が硬く、熱いそれが行き来するのと合わせて喘いだ。周りの人盛りがどんな反応をしていようと考えられなくなった。

「あぁっ・・・!」

ビクビクビクっと激しい小刻みの痙攣をした後銀時はフラリと力が抜けてもたれたが、突く事を止めずにすこししてから、銀時の中に吐精してパンツを上げ、チャックも上げ、腰ひもを器用に結び直し、腰元に手を添えながら支えてくれていた。

電車が停車し、目的地に到着するまで支えられ、アナウンスが流れると神楽と新八を起こして荷物を抱え、ふら付く足元で懸命に電車から降りると小走りで公共の厠へ向かう。神楽が「お腹でも痛いの?」と訊ねて適当に頷きながら、赤い頬を見られたくなくて強引に人ごみを割って駆け込んだ。

「どうしたのかな銀ちゃん、酔ったのかな?ねぇ新八」
「う、うん、そうかも知れないね・・・」
「どうしたの?新八も気分悪いの?」

神楽は何も知らないが、新八は気が付いていた。

銀時が途中起こしてきた時、背後に誰がいたのか。
何故途中居眠りする自分を起こしたか。
何故銀時が慌てて公共の厠へ駈け込んで行ったのか。

「温泉早く入りたいなー。ね、新八っ」
「そうだね」
「銀ちゃん遅いねー」
「もうちょっとかかるかも知れないね、ちょっと飲み物でも買って来ようか?」

多分暫く銀時は戻ってこない。

銀時が駆け込んだ際、尾行するかのように“彼”が、一緒について行ったのを見ていたから。

“彼”と目が合い慌てて寝たふりをしてしまったのを後悔したが、しかし自分にはどうしようもなかった。ひと睨みされてしまったら、他の人もそうしてしまうと勝手に納得して買ってきた飲み物を神楽に分け与えながら、目の前を交差する人盛りを他人事のように眺めた。

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