手を引かれて 2016/11/30 16:10

大分時間が経ってしまいましたが予告通りにつらつら感想を述べたいと思います。
読んだ本の話。ネタばれがあるかもしれないのでご注意。あらすじに関してはウィキペデア様様。


【ねじまき鳥クロニクル 第一部泥棒かささぎ編】村上春樹著、発行は1994年。
会社を辞めて日々家事を営む「僕」と、雑誌編集者として働く妻「クミコ」。それなりに平穏に過ごしていたが、飼っていた猫の失踪をきっかけに少しずつバランスが狂い始める。

恥ずかしながら、村上春樹の著作を読んだのはこれが初めてでした。以前読んだ「ティファニーで朝食を」の翻訳が村上氏だったから一応文章には触れているけれど、それは数に入らないでしょう。
勝手に抱いていたイメージとしてもっと堅い感じなのかと思ったら実際は逆で、とても柔らかい印象を受けました。滑らかで流れるような感覚。ひとつの事物に関しての描写が長いことがあって、「まだ書くの!? くどくない!?」と軽い衝撃を受ける部分が結構あったんだけどそれがまた味になっているというか無意味だと感じることはなくてこの書きまわしも彼の魅力のひとつなのだろうと思いました。
ストーリーの展開も独特というか、この作品しか読んでいないから何とも言えないのだけれど登場人物はそれほど多くないのに広い世界を想像させるところがありました。間宮中尉の独白の鬼気迫る描写と細部までの書き込みには息を止めながらページをめくらせる迫力があったし、全体を通してゆっくりと時が進んでいながらも濃い空気が流れているような雰囲気を感じました。

第二部は図書館で借りて読んでいたんだけど期限内に読み終わらなくて途中までしか読んでいません。なんてこった。


【キッチン】吉本ばなな著、発行は1988年。
両親と祖父を早くに亡くし、祖母と暮らしていた大学生の桜井みかげ。しかし唯一の肉親である祖母さえも亡くしてしまい天涯孤独の身となる。そんな時祖母の知り合いであったという大学生の田辺雄一に声を掛けられ、彼の家でその母・えり子とともに共同生活を送ることになる。

「私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う。」という書き出しなのだけれど、うーん。好みです。自分が女だからなのかもしれないけれど女性作家さんの文章はなんとなく読みやすい気がする。ばななさんの作品は柔らかくて温かみのある文章だなと感じました。
祖母を亡くして孤独になったみかげの家に突然雄一が訪ねてきてあれよあれよという間に一緒に暮らすことになるんだけど、この設定だけみると「どこの少女漫画じゃ」と思いません? 私は思った。いくら親が一緒に住んでいるとはいえ、同じ年の頃の女の子を居候させようと思うかなあ。なーんて無粋な読者な私ですが、読み進めていくうちに納得してしまった。特別に「ああこれか」っていう理由があるわけではないんだけど、納得してしまった。とにかく雄一くんが素敵男子なのでそれを確認するために読めばいいと思う。みかげとの距離も絶妙で、最後まで残るくすぐったいような温かさは、キッチンで香るスープの湯気のようでした。


【悲しみよ こんにちは】フランソワーズ・サガン著 1954年発行
18歳になるヒロイン・セシルと父のレイモン、そしてその愛人のエルザは別荘で夏を過ごしていた。セシルは近くの別荘に滞在している大学生のシリルと恋仲になる。そんな彼らの別荘に亡き母の友人・アンヌがやってきて、物語は少しずつ動き始める。

なんといっても、瑞々しい。この作品はサガンが18歳の時に出された処女作らしいのだけれど、十代の瑞々しさや初々しさ、そして反抗心が魅力的に表現されていると感じました。心の移り変わりとか人の脆さ、独占欲や嫉妬。大人だと煩わしい羞恥心に阻まれて抑え込んでしまうような感情を素直に溢れさせている。この素直さに対する感嘆と少しの恐怖が、自分の中にある十代という危うい時期への憧れなのだろうと思いました。



他にもいくつか本を読んだのですが今日はここまで。また改めて。
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