花盛りのダイアモンドのクリスマス 2016/03/23 21:39

カポーティ著「ティファニーで朝食を」に収録されていた表題作の他三作品を読みました。

私、このひとの作品すきだなと確信した。全作品とも終わり方が好みでした。表面だけを見ると基本的にバッドエンドなんですよね。でもそんな一言で言い表せられるようなエンディングではなくて。


「花盛りの家」
娼婦が運命の出会いによって田舎の青年の家に嫁ぐ話。カポーティの書く女性はすごく魅力的だなと思いました。ホリー然り。
田舎に嫁いだオティリーは都会の華やかな生活を懐かしく思い、迎えに来た友人と楽しく幸せな気分でおしゃべりまでするんだけど、でも結局最後には、花盛りの家に残ることを決める。そこが本当に自分の居場所なのかもわからないのに(と、私は思った)。都会の町ではオティリーを愛し、待つひとがたくさん居るのに。帰ったらきっと何の苦労もなく、幸せに暮らせるはずなのに。
でもオティリーは帰らなかった。可愛い花盛りの家で、ロワイヤルとの冴えない生活を選んだ。
私はちょっと切なくなった。


「ダイアモンドのギター」
すきだなあ、と思った話。まあ平たく言えば囚人同士の恋の話なんだけど、同性愛をここまで自然に爽やかに清潔に書けるものなのかと感銘を受けた。
ミスタ・シェ―ファーはまっすぐに彼を見て、彼を思い、大切にしていた。きっとティコ・フェオだって、すべてが嘘ではなかったはずなのだと私は思う。あの一瞬の内にミスタ・シェーファーが悟ったすべてのことの中に、きっと少しは含まれている。
結果だけみるとあっさりと裏切られ、ミスタ・シェーファーの一途な思いはただ利用されただけという感じなのだけど、うーん。別に不幸ではないというか、ティコ・フェオが見ている世界はもしかしたら今もミスタ・シェーファーの中で息づいているのではないかとか、ほんのり幸せな気分も残っていて、その辺の配分が絶妙で、私はすきだ。


「クリスマスの思い出」
タイトルそのもの。僕(7歳)と遠縁のいとこであるベスト・フレンド(六十を越している)のクリスマスの話。彼女は僕を「バディー」と呼び、毎年クリスマスの季節になると一緒にフルーツケーキを大量に作る。
映画を観ているみたいにカラフルで温かいお話であった。この作品もまた最後は彼らが離れ離れになってしまって、彼女の死を背の伸びた僕が悼むという形で終わるんだよね。言ってしまえばバッドエンド。でもやっぱり読後感が良くて、愛しい気持ちで読み終わることができる。十二月の冷えた薄い青の空を仰ぎ、本を閉じることができる。


一冊を通して本当に素敵だったので、また読み直したいなあと。色々と、バランス感覚のよいひとなのだなあと思いましたカポーティ。ぜひ他の作品も読んでみたい。

では今回はこれにて。
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