ティファニーで朝食を 2016/03/04 00:51

数年前に買って本棚の肥やしになっていた文庫本を読んだ。
「ティファニーで朝食を」。著者は言わずと知れたカポーティ。
知らなかったのだけれどこの本には表題作の他に三つの作品が収録された作品集で、実はまだ一作目の「ティファニーで朝食を」しか読了していないのだけれどこの感動を忘れないうちに書き留めておきたいと思う。

まず、どうして私は今までこの作品を読んだことがなかったのか心底不思議に思ったし悔しかったし奇妙な既視感さえ覚えた。なんというか、まさに自分が求めていたものがここにあったのだという気持ちになった。やはり名作には名作と言われるだけの質量があるものなのね。言葉では言い表せないような、じんとした感動が残る。

ミス・ホリー・ゴライトリーにすっかり恋をしてしまった。まったく本当に、愚かしいもいいところなのだけれど少しだけ悔しいと思ってしまった。ああ、私にはこの女性を描くことができない、と。世界で一番魅力的な女性に見えた。ほっそりとした肩、色の混じったブロンドの髪、青と緑の線の入った温かに光る瞳、どきりとするほど正直な物言い、柔らかな物腰。

ああ伝えられないなあ。とにかくすごく面白かったの。ホリーの魅力だけでなく、ストーリー展開も綺麗で軽妙でページを捲る手が止まらない止まらない。ホリーの生きる世界観に圧倒されつつ頷ける場面もあったし、考察が行き届かない思考描写もあった。そこがまた良かった。そして読後感が最高に心地良い。すっとする。風が吹いている。


私はきっとこうして、素晴らしい作品の数々を見過ごしているのだろうなと思った。もっと早くに出会っていてもいいくらいに有名な作品なのに、私は出会おうとしなかったのだ。チャンスや出会いは、自分で手に取るものね。


『それはまるで歌の文句みたいに僕の耳に残った。「ミス・ホリデー・ゴライトリー、トラヴェリング」』


まさに、耳に残る作品でした。映画も絶対に観るぞ。
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