To be, or not to be,
 かの有名な劇作家、ウィリアム・シェイクスピアが綴った四大悲劇の第五幕「ハムレット」の一節である。シェイクスピアの真意こそ定かではないが、この言葉を「生か死か」と捉える人もいれば「このままでいいのか。それともよくないのか」と捉える人もいる。更に、「するべきか、しないべきか」とも。

「……うーん」

 そしてイヴもまた、まさに「するべきか、しないべきか」で葛藤していた。



 事の始まりは今から数分前。ノアの屋敷で暇を持て余していたイヴは、退屈さから逃れる為に"掃除"をする事にした。と言うのも、アジアでは新年を迎える前に"大掃除"をし、汚れや害、更に厄等を来年に持ち越さないようにする――という習慣があるそうだ。
 幾ら超人であるノアと言えども、肉体の基礎は普通の人間と代わりはない。病気にだって掛かるし、厄にだってそれなりに影響される。……筈。
 ともかく皆には健康で居て欲しいと、人類の敵とは思えない思考半分。

「ついでになんか面白いもの見つけたりしないかな」

 更に暇つぶし半分から、イヴの一人大掃除が始まったのだった。
 さて、まずは何処から掃除しよう。


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