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呪術師の首に懸賞金がかけられることなんて良くあることだ。特に御三家関係は。

御三家の一つ、呪力を持ち加茂家に産まれた私はそれはそれは大層可愛がられた。御三家といえども私は分家産まれの女だし、当主争いに関わる必要がなかったのが多いのだろう。
「大きくなったら当主様を守るのよ。パパもママもそうやって生きてきたの」
常にそう言われて育ち、自分もそうなると思っていた。

まぁありがちな話だ。分家産まれなのに赤血操術が使え、あまつさえ何処かのご先祖さまから氷の術式を相伝してしまった。
本来ならありえない、血液を氷に変えるという生得術式を持つ私はそれが発覚してから本家で暮らすようになった。

あり得ない生得術式、あり得ない呪力量、あり得ない飲み込みの速さ
もしも私が本家生まれだったらどれだけ良かったか、もしも男だったら。
そんなもしも、もしも、を積み重ねながら私は育った。


小学生のある日、今日は呪霊を祓う日だった。非術師の車に揺られ廃墟まで連れてこられた。
「それじゃあやってみよう。出来るね?」
そう威圧的に言われ、ナイフで左手首に傷をつける。
出てきた血液に呪力を流し、凍らせて氷塊を作り、呪霊に向けて飛ばした。

隣にいる汚いおじさんが喜んだ声をあげた。汚い手で頭を撫でられた。この人は以前憂さ晴らしに私を殴ってきた。
反対にいるおばさんは嬉しくなさそうだ。本家産まれより出来がいいなんて、と言いながら一週間前に叩かれた。

「やはり遺伝子だけ残すのがいいのかも知れない」
「女を当主にするわけにはいかない。しかも分家だぞ」
コソコソ コソコソ
何を言っているのか分からなかったが、いい話でないことは分かる。嫌いだ、家なんて嫌いだ。ママとパパに会いたい。

キン、と高い音がした気がした。
思わず頭を低くする。第六感、勘だ。立ったままだと死ぬ。

どさどさと音がした。両脇のおじさんとおばさんの体が半分しかなかった。

「あれ、今ので仕留め損なったのか。六眼といい、最近のガキは出来がいい」

少し離れたところに真っ黒の男が立っていた。口元に特徴的な傷がある切長の目をした男は、やる気なさそうな、しかし殺意に濡れた目をしている。
周りに目を向ける、一緒に来た大人たちは皆倒れて血を流していて、見るからに助からないのが分かった。
ぱちりと目が合った。真っ黒な瞳は私を写している。

「…悪くねぇな」

何が、だろうか。男は少し考える素振りをした後、日本刀を肩に乗せてたいる呪霊に食べさせる。持ち運び用の呪霊だろうか、便利そうだ。
「光源氏計画、ってやつだ」
日本刀を仕舞ったのを見届けて、体の力を抜いたのが悪かったんだろう。首に衝撃が来て、意識が遠のく。
これが私とお兄さんの初対面だった。
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