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「「めんそーれ!!!!」」

浮かれた声で言う天内さんと五条サン。
黒井さん拉致から約11時間半後、私達は沖縄で海水浴をしてた。
救出、尋問ともに問題なく終わり、折角沖縄に来たからと言う事で空き時間に海水浴をする事になった。

ちなみにこの水着だが、近くの水着販売店で購入した。レンタルでもよかったが、ここにいるのは特級呪術師として活動する金持ち、御三家で最強呪術の金持ち、家出中とはいえ御三家の産まれで特級呪術師の金持ち、星漿体として国から援助を受けてる金持ち、そしてその従者。レンタルという選択肢がある事を買ってから思い出した。


水着販売店に到着し、あーでもないこーでもないと悩んでる最中に、突然天内さんから声をかけられた。

「なまえの髪は、その、綺麗だな」

予想もしてない内容にびっくりして、一瞬フリーズしてしまったがすぐに言葉を返す。

「天内さんのが綺麗ですよ。これだけ綺麗に伸ばせるの、羨ましいです」
「なまえは髪を伸ばさないのか?」

少し低い位置から手が伸びてきて、私の顎までの長さの髪を触る。
髪を伸ばす、か。生きる事に関して無頓着だった時期に、伸ばす…というか伸び放題だった時期がある。家を出たタイミングでバッサリと切ってしまったが、また伸ばすのもアリかもしれない。

「短い方が楽なので…、でも、また伸ばしてもいいかもしれません」
「きっと似合うぞ!」
「理子様!」

これなんてどうでしょう!そう浮かれた声で黒井さんが見せてくれたのは白とピンクのワンピースタイプ。
あ、かわいい。
私はそう思ったのだが隣の天内さんは不機嫌そうに

「子供っぽい!」

と言ったのだった。

「えー、理子様はこれくらいのが似合いますよ」
「嫌じゃ!妾はもっとこう…セクシーなやつをだな…」

言いつつ駆け出した天内さん。数分後、笑顔で戻ってきた彼女は後手に何か隠している。

「妾は…これじゃ!」

ドドーンと効果音がつきそうな勢いで見せてくれた水着は黒の、かなりセクシーな水着。
天内さんは可愛いから似合わないことは無いと思うけど、年齢的に少し、いやかなり厳しい気がする。あとバストやヒップのサイズ的にも。

「だ、ダメです!!そんな露出が多いの認めません!」
「ダメじゃない!妾はこれ!これにする!」

黒井さん的には女の子らしいのを、でも天内さん的にはセクシーなのを。2人の意見が噛み合わなず、言い合いが激化していく。
うーん、天内さんに似合いそうな水着か…。
2人の話し合いは一旦放置して、彼女に似合う水着を探す旅に出る。可愛くて、セクシー。どちらにせよ黒井さんの要望を叶えるとするとラッシュパーカーは着るとして、あ、この水着似合いそう。

そうして2人の意見を参考に私が持って行った、胸元がフリルのビキニ(下腹部がすこし長めにできており、お尻やお腹の露出もそんなに多くない)と白のラッシュパーカーに決まったのだった。


「遅い!」

ようやっと3人分の水着が決まり着て外に出たら、随分と不機嫌そうな顔した五条サンがいた。
遅い、と言っても30分の買い物はだいぶ短い方な気がするが、彼にとってはとてつもなく長い時間だったみたいだ。
ちなみに黒井さんは長袖のスポーティーなものを、私はオフショルのワンピースタイプのものにした。

「まぁまぁ悟。水着買う機会なんてそうそう無いんだし、いいじゃないか」
「そうじゃ!男と違って女は種類が多くて大変なのじゃ!」
「どれも変わらねぇよ」
「そんなことないよ。みんなよく似合ってる」
「オエ」

黒いパーカーを羽織った五条サンと何故かアロハシャツを羽織る夏油さん。もしかしなくても夏油さんが一番はしゃいでるのでは?と思ってしまう。

じゃあな!めんそーれ!!!!と声をかけて海に走っていく五条サンと天内さん。天内さんはともかく、五条サンは一つ上のはずだが、正直そうは見えない。

「夏油さんは人たらしですね」
「え、そうかい?」

きょとりと驚いた顔でこちらを見る夏油さん。

「ほら、さっきの」
「たしかに、ふふ、そうですね」

やっぱり、私たちより大人な黒井さんに肯定してもらえると自分の意見に自信がつく。
さっきの「似合ってる」と言う言葉。女の子側からしたら折角新しい水着を、それも一応30分かけて選んだのだ、可愛いとか似合ってるとか、そう言う言葉が欲しくなるが、それを言ってくれるような人はいないと思ってた。天内さんなんて少し照れてたし。今は海に夢中でもう忘れたみたいだけど。

「私としては、事実を言っただけなんだけどな」
「夏油さんモテそうですもんね」
「女性には悟のが人気だよ」

五条サン顔はいいもんな。顔は。
性格は最悪だけど。何かあるたびにこれだから加茂家は、おっと分家だからお前は当てはまらねぇかも!悪りぃな!なんて人が触れられたくないところにズケズケ入ってくる。
そう思ったのが顔に出てたのかもしれない、黒井さんが不思議そうな顔をして

「そういえば、五条様となまえ様は特段仲がよろしいですよね?」

・・・。
「ぶふっ」
三秒間ほど何もない時間が産まれた後、夏油さんは吹き出した。黒井さんはあれ?違いました?あれ?なんて慌てている。

「別によろしくないですね。向こうは五条、私は一応加茂なので、小さい頃少し交流があっただけです」
「ふふふ、でも、それだけの仲ではないだろう?」

笑いを堪えながら聞いてくる夏油さんに殺意が沸く。この人、雰囲気は「クールです!お淑やかです!」って感じなのに意外と表情豊かだし、めちゃくちゃ性格悪いよな。1日で理解した。

「小さい頃は、まぁ、それなりに仲良く遊んでたんですけど、別の子と遊んでいる時にいきなり殴られて大喧嘩。それから分家が本家が、と言い合ってるうちに関係がこじれました」
「悟にも可愛い時期があったんだな」
「あら…うふふ」

多分嫉妬だったんだろうな〜って理解できたのは、私がある程度大人になってからである。その頃には既に関係はこじれにこじれた後だった。
なんとも言えない生暖かい空気が夏油さんと黒井さんから伝わってくる。

「私も!遊んできます!」

なんだがむず痒い雰囲気から逃げるように、私は海に向かって走り出したのだった。
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