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お主らが付いてくると目立つ!友達に見られたらどうするのじゃ!

そう天内さんに言われてしまった為、人目のない学内プールで待機する。夏油さんが監視用に四級レベルの呪霊を待機させている。
夏油さんの術式、本当何にでもできて便利だな。

五条サンは高専の学園長に、本当に1人にさせていいのか相談している。私たちは指示を待ちつつ、何か異常があった時ように準備だ。

手ぶらな私たちは雑談して時間を潰すしかない、黒井さんが天内さんの身の上話をする。彼女も彼女で大変な人生を歩んでいるのだろう。

「天内さんってどんな子なんですか?」
「理子様は……そうですね、無邪気で天真爛漫で、少々じゃじゃ馬なところはありますが、素直で優しい子です」
「ふふ、仲良いですね」
「かれこれ10年近い付き合いになりますからね」

優しく微笑む黒井さん、天内さんのこと本当に好きなんだな。
ふと、黒井さんに斎藤の姿がタブる。彼とは一応私が産まれてからの付き合いだから、15年になるのか。色々迷惑をかけてる自覚はあるが、彼はいつも私に幸せになって欲しいと伝えてくる。照れ臭くて適当に返してしまうけれど、なんだかその気持ちに真摯に答えてあげた方がいい気がしてきた。

「素敵ですね」
「ありがとうございます」

風が吹く。プールの塩素のにおいと春が終わるにおいが混じって、なんだか心が暖かくなる。このまま、無事に任務が終わるといいな、なんて一瞬でも思ったからだろうか、真面目な顔をした夏油さんの鋭い声が響く。

「2体祓われた、理子ちゃんの所に行きます」

呪術なんて世界に来た以上、平和な時間は続かないのだろう。暖かな気持ちは一瞬にして氷点下になった。

先に駆け出した五条サンと夏油さんについて私達も学内に向けて走り出す。黒井さん曰く、音楽室か礼拝堂に天内さんはいるらしい。

「悟は礼拝堂、黒井さんは音楽室、私となまえは正体不明2人を」
「承知いたしました」
「祓われたのは東門近くだ」
「はい」

次の角で曲がる。学内の地図は待機時間中に頭に叩き込んだ。東門、東門、東門。
私立のミッションスクールらしく、洋風で広い廊下を駆け抜けて外にでる。木々や植え込みは細かく手入れされて、本当に金のかかった学校だ。学校のパンフレットも見たが、写真映えのする校舎に可愛い制服、羨ましい限り。

そんな学校に、頭に紙袋を被った筋骨隆々の男がいたら。

「あれ〜?先生ですかぁ?どうしたの、その格好。変なの〜!」
ケラケラと笑いながら、警戒なんてしてないフリで男に近く。

「あぁん?生徒か?こんな時間に、私服で何してやがる」
言葉と同時に飛んできた右ストレートを躱し、その腕を掴んで後方に投げる。倒れた男のもう片方の腕も掴み、拘束がわりに両腕を凍らせる。

「っち、けど、氷なんて」
グググと力をこめて手の拘束を外そうとする男。たしかに通常の氷程度の拘束なら簡単に外れるだろう。

しかし、残念!氷は温度によって硬さが異なるのだ!
−70度の氷は「ナイフで傷をつけることができず、刃が傷む」程度の硬さになる。さらには私の血液と呪力で作られた氷は不純物を含まない為、無色透明な氷になるのだ。
まぁつまり!冷凍庫なんかで作る氷と一緒になんてしないで欲しいな!

突然男の体が溶け出し、ドプンという音と共に男は消える。それと同時に私の背後から拳が飛んでくる。

「式神…じゃないよね」

不意を狙った一撃だっんだろうが、この程度の攻撃に当たっていたら特級呪術師なんて名乗れない。振り返るのと同時に足払いをして、再度男を床に這いつくばらせる。

「あ」

ひょいひょいと天内さんを掴んで屋根を移動する五条サンを見つけた。安全を考慮し高専に逃げるのだろう。正体不明の1人はここにいるし、もう1人は夏油さん対峙してるはず。なにより最強と名高い五条サンがいるのなら、天内さんは無事に高専に届けられるはずだ。

「あれが3000万か」
「は?3000万?」

ドプン。
視線を男に戻した時、すでにそこにはいなかった。
あ、ヤベしくじったかも。
天内ちゃんを見てたら敵を取り逃した。大目玉もののやらかしだが、その代わり相手の呪術の目処がついたから許して欲しい。
六眼持ちには何の役にも立たないだろうけど。

「敵は?」
「ごめんなさい、逃しちゃいました。そっちは?」
「倒したよ」
「流石」

私が対峙した男も、逃げ特化術式だっただけでそこまでレベルは高くないから、夏油さんは瞬殺だったんだろう。手早く理子ちゃんが五条サンと学校を出た事、そして私の取り逃した男は分身術を使い、本体は自由にスイッチ出来ることを伝えた。

「なるほど。分かった、なまえはすぐに悟を追ってくれ。私は黒井さんと合流する」
「はーい」

頭脳派がいると難しいことを考えなくて済む。
言われるがまま、私は五条サンを追った。
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