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目が覚めるとお昼の時間だった。学校ーー!?と思ったが今日は日曜日、もう一回二度寝してもいいけど、流石にお腹空いたな。以前家入さんが一人くらいなら学食を食べても問題ないと言ってたし、それに甘えさせてもらう事にしよう。
呪力切れも貧血も、1日寝たら問題なく回復した。
ご飯、の前にお風呂かな。任務終わってずっと寝ていたから体が気持ち悪い。前回高専内を案内してもらったときの記憶を頼りにお風呂場まで向かう。
高専のお風呂は比較的入り口に近いところにある。多分血に濡れて帰ってくる事が多いから。
入り口で、見覚えのある白髪が目についた。綺麗な白髪は珍しく血に濡れて赤と白のコントラストを作っている。

「うわ、血でドロドロじゃないですか。お得意の無下限はどうしたんですか」
「うるせーな、気ィ抜いたら返り血が飛んできたんだよ…、って加茂ちゃんじゃん」
「どうも」
「何?なんで高専?またしくじったの?」
「色々あったんですよ」
「ダッセーの」

お風呂場が近くてよかった。私から話しかけておいてアレだけど、煽られるのは面倒だ。「じゃあ」なんて挨拶をしてお互いの脱衣所に消える。
反転術式で傷がないから、お風呂で染みないの最高だな。
髪の毛乾かしたりなんなりして1時間、脱衣所の暖簾をくぐると五条サンがいた。

「あれ、待っててくれたんですか?」
「ちげーよ、偶然だ偶然」
「ふーん」
「飯?」
「はい」

今度は二人して食堂に向かう。自然乾燥派のイメージのある五条サンの髪の毛は、意外にもほとんど乾いていてドライヤー使うタイプだったんだとすこしビックリした。
今日の高専のメニューは生姜焼きみたいだ。お盆に自分の分をとって前と同じように五条サンの後ろに続く。相変わらず高専の食堂は10人前後しか人がいない。

「あ、七海さんと灰原さん」
「…どうも」

一緒に来といて別の席座るの変だよな、と思い五条サンの隣にお盆をおこうとしたとき、見知った顔が目についた。
同い年だし、五条サンと食べるより不自然がないだろうと思い一言断って七海さんのテーブルに行こうとすると、五条サンに腕を引かれる。

「なんですか?」
「……あー、なんでもない」

そう言って離れた五条サンの手。一体なんだったんだ、一人で食べるのが寂しいのか。今夏油さんも家入さんもいないもんな。憐れみの目を向けてることに気付いたのか、五条サンが嫌そうな顔をする。

「七海さん達が良ければですけど、四人で食べます?」
「うっせバカ」
「えっひどい」

ついにはいつまでもテーブルに付かない私たちを見て、灰原さんが「一緒に食べます?」って聞いてくれた。相変わらずとても察しのいい素晴らしい子だ。断る理由もなく、結局四人でテーブルについて食事を取る。少し前に任務で仲良くなった灰原さん、私が育成している七海さん、なんとも言えない関係性の五条さん、奇妙なメンツすぎる。

「なまえちゃんはなんで高専に?任務?」
「昨夜の任務で呪力切れと貧血起こして、泊めてもらった」
「貴方がそこまでやられるの珍しいですね」
「相性最悪で」
「オマエの術式、ほんとポケモンレベルの相性あるもんな」

バカにされるかと思いきや皆から生暖かい視線をいただく。
炎タイプ一体とかなら多分問題なかったんだろうけど、昨夜は環境まで私に合わせた状態だった。デバフの影響が大きい。

「家入さんにお礼言いたいんですけど、まだこの時間は寝てますか?」
「あー、昨夜オマエの面倒見てたんなら夕方まで寝てるかも」
「わかりました」

それは残念だ。次来た時はちゃんとお礼を言おう。
それなりに高専の人と交流ができたけど、同性なのもあり家入さんが一番一緒にいて落ち着く。彼女のそばはなんか、不思議な雰囲気がある。あと大人の女性って感じがしてカッコいい。

「そういや昨日なまえちゃんを抱えて来た男の人は?呪術師っぽくなかったけど」
「ゲホッ、ゴホッ」
「あー、甚爾さんは帰ったよ」
「は?あいつまた高専内入ってきたの?」
「五条さんは知り合いなんですね」

灰原さんに言われて五条サンの顔が嫌そうに歪む。五条サンの知り合いというか…うーん。

「あいつは…いつか殺す」
「えっ怖!何かあったんですか!?」
「天元の時に色々」

苦々しい顔をした五条サンに思わず苦笑い。もしかしたら五条さんにとって、お兄さんが初めての敗北だったのかも知れない。五条家の次期当主のプライドをへし折るお兄さん。いやあの人ほんと凄いな。

「なまえさんとの関係はどうなんですか?」

ズレた話題が七海さんによって元に戻る。話に興味なさそうな感じだったが、意外と聞いていたみたいだ。

「あー……、ペット?」
「「「え?」」」

理子ちゃんの時もお兄さんの話になってたが、毎度毎度なんて答えるか迷ってしまう。家族が一番感覚としては近いけど、少し違う。友達でもないし、結局ペットが一番近い。

「オマエ…それ大丈夫なの?」
「乱暴とかされてない?!」
「……」

上から呆れ、心配、ドン引き。三者三様の反応。七海さんに関しては私を見る目がすごく厳しくなった気がする。

「大丈夫ですよ、気まぐれに家に来る猫ちゃんみたいな。それに斎藤…従者もいますし」
「ふーん」

なんだこの微妙な雰囲気。五条サンの機嫌がちょっと下がったのが分かる。この場で物理的にも立場的にも上の五条サンが機嫌悪くなると、いやでもテーブル自体の空気が悪くなる。私は聞かれたことに答えただけなのに。なんだ、お兄さんの話題が悪かったのか、そんなにダメか!殺されかけたもんな!仕方ないか!

「そういえば、次の任務なんですけど」

テーブルの空気は灰原さんによって新たな風が吹き込まれリフレッシュした。灰原さんには感謝しかない。
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