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「はじめまして、加茂なまえです。下の名前で呼んでください」
「加茂ちゃん、久しぶり〜〜、家出たって聞いたけどホントォ?大変だね」
「はじめまして、夏油傑です。お噂はかねがね」

はじめましてって言ってるのにこっちのことはお構いなしな五条サン。家出のことを突っ込んでくるあたり、本当人の嫌な所を付いてくる。性格ワッル

「まぁ、色々あって。五条サンは相変わらずですね。」
「そうだよ〜、加茂ちゃんと違って順風満帆!超元気!」
「そうですか。五条家は子供をベタベタに甘やかす主義なんですね。だからジコチューになる」
「は?俺先輩なんだけど」
「ですから一応、い、ち、お、う、敬語使ってるじゃないですか」

これだから嫌い。御三家で互いに嫌いあってるとはいえ、五条家・禪院家とはたまーーーに顔合わせをする。
でまぁ、小さいころはそれなりに多少は、まぁ少なくとも今よりは仲が良かった。でも昔ちょっとした事から喧嘩になって、家同士が嫌いあってるからタイミングさえ避ければ会うこともあまりなくて、そのまま私が家を出て、と喧嘩別れ的な感じになったのだ。
まぁ喧嘩の中身はしょうもないが、多分一番の原因は

「あぁそうか。悟は本家、なまえは分家だから純粋に相性が悪いんだね」
「「言語化するな!」」

ポン、と手を合わせた夏油さん。五条サンと仲良くしてるだけあって、この人も性格が悪いのかも知れない。2人揃って人の入って欲しくないところにまーーズケズケと…。

「で?オマエ、何しにきたわけ?ご指名とは言え、保険の保険の保険の保険の保険の保険の保険の保険なんていらねーんだけど。むしろ邪魔」

挨拶もソコソコに、五条サンは両手をポケットに入れてとても太々しい態度。
あ、そっか。やけに最初から突っかかってくると思えば、自分達の任務を邪魔されて機嫌が悪いのか。

「さぁ?噂によく聞く最強サンが信じられなかったんじゃないですか?」
「一度でも俺に勝ってから言えよ。中途半端に尻尾振って、何のために家出したんだか」
「みーんながヨチヨチしてくれる甘えんぼちゃんには分からないことですよ」
「はいはい、2人とも落ち着いて。多分星漿体が女子中学生だからじゃないかな。同性がいた方が守られる身としても気が楽だろう」
「肉盾って事か!」
「最強サン(笑)がしくじったら、仕方なしに肉盾になってあげますよ」
「こら悟。すぐに煽らない。なまえも乗らない」
「はぁい」
「傑だっていつも煽ってくんじゃん」

ボンッ

上の方、星漿体がいるらしい建物から音がする。
あれ、ビルの一角燃えてね?これチンタラ会話してる場合じゃなかったやつじゃない?

「これでガキんちょ死んでたら加茂ちゃんのせいだから」
「は?」

これだから本家は。すぐ人のせいにする。

「喧嘩してる場合じゃないって」

夏油さんの声が少し離れたところでする。ちらりと目を向けると呪霊に乗って浮いてる夏油さん。それと豆粒みたいなのがビルから落ちてくる。小さくてよく見えないけど、多分あれ星漿体じゃん。
資料で見たとはいえ、呪霊を自在に操る術式、すごいな。強能力じゃん。あと空飛べるのはずるい。

「いやぁセーフセーフ」

星漿体を受けとめた夏油さんを見て、五条サンが微塵も焦った様子なくそう呟く。それとほぼ同時刻、ナイフが何本か飛んできた。多くは五条サンに、残った微妙な数は私に。分かってたけど、舐められてるんだろうな。ノールックで指先から氷を出し、ナイフを全て弾く。
隣では五条サンから30センチほど離れたところで、投げられたナイフが制止する。無限、ホント便利だな。おちゃらけたアホとはいえ、術式は誰よりも強い。

「加茂ちゃん、ヨロシク〜」
「はぁ?」
「どうせ役立たずなんだから、雑魚くらいは片付けてよ」
「…雑魚?私のことを言ってるのか」

プライドが高いのだろう、頭にQと書かれた帽子を被った人が眉間に皺を寄せて低い声で尋ねる。
さっきも夏油さんに嗜められてたのに、すぐ人を煽る癖は私以外にも適用されるらしい。

「クソガキが、まずはお前から」
「私から?」

帽子の人は、言葉を止めて驚いたように脇腹を見る。そこには氷塊が刺さっている。氷塊周りからパキパキと音を立てて帽子の人の体は凍っていく。

「な、」

驚いてる暇があればせめてさっさと氷を抜けばいいのに。体が凍っていく原因なんて一目瞭然なんだから。
帽子の人は何か言おうとしたのだろうが、それよりも凍りつく方が早かった。氷塊部分から凍りついた彼(彼女?)は、驚いた表情で固まっている。

「ウッワーーーー、加茂ちゃんえげつな」
「私にやれって言ったの五条サンですよね」

最初の場所から一歩も動かず見ていた五条サンは少し引いた表情でこちらを見る。むしろ、下手に五条サンの術式使うより、私の術式で冷凍保存する方が怪我も少ない筈だ。

「せめてなんか喋らせてあげてよ、雑魚だけどカワイソーじゃん」
「解凍すれば話せるようになりますよ」

何故か帽子の人に同情的な反応をしているが、コンコンと帽子さんの頭をノックしている時点で同情心なんて感じられない。
やれやれ、なんて肩をすくめてわざとらしく呆れた反応をした後、五条さんはこちらに向かって携帯を投げてきた。

「写真撮って」

カチカチの帽子さんの隣で満面の笑みでダブルピースをキメる五条サン。検索履歴でも見てやろうかと思ったが、面倒になるのは分かっているので大人しくシャッターボタンを押したのだった。
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