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素敵なケーキ屋さんでケーキ食べた後はショッピング。お洋服やコスメを見つつ、気になったのは買いつつ、いろいろなお店を回って行く。
今は黒井さんに連れられて化粧品コーナー。キラキラしたコスメが沢山あってどれも可愛い。

「理子様はやっぱりこういう可愛らしい色が似合いますね」

そう言ってテスターのリップを見せてる黒井さんはとても楽しそうだ。コスメが好きなのかもしれない。
理子ちゃんも興味津々に覗いている。

「黒井!これは何だ!」
「それはアイシャドウですね。クリームタイプのものもあるんです」
「おお!凄いな!」

楽しそうな理子ちゃん達を見てるとこちらまで笑顔になる。私もあまりコスメに詳しいほうじゃないから、黒井さんの解説を聞くのはとても楽しい。

「なまえ様は…こちらの色味なんて似合うと思いますよ」

そう言って見せてくれたリップ。小さなラメがチラチラと光っていてとても綺麗だ。

「可愛いです…!」
「たしかに、なまえの今日の服にも合うと思うぞ!」
「えへ、そうかな」
「よし!妾が買ってやる!」

そう言ってカウンターに向かう理子ちゃんを慌てて止める。
流石に年下の女の子にプレゼントされるわけにはいかない!

「ダメか?感謝の気持ちとして、どうしてもプレゼントしたいのじゃ…」
「うっ…」
「理子様のお気持ち、受け取ってあげてください」

そんなウルウルした瞳で言われると断るにも断りきれない。でもでも、年上としての誇示がある…!心の中でぐるぐると気持ちが渦巻いている。

「なまえ、護衛の件、本当に感謝しておるのじゃ。なまえ達がいるから今妾はここにいると言っても過言じゃない。頼む、これくらいは受け取ってくれ」
「ぐぅ……、そこまで言われたら…」

折れた。はい、折れましたとも。
これだけ言われて受け取らないほうが失礼だろう。それに黒井さんに選んでもらったリップは色もパッケージもとても可愛い。正直理子ちゃんが買うと言い出さなかったら自分で買ってたし…。

今度こそカウンターに買いに行く理子ちゃんを見届ける。
ぴょこぴょこと動く彼女の三つ編み。本当に可愛い子だなぁ。
買うのを待つ時間、お店の外で理子ちゃんを待つ。

「理子様も仰っていましたが、本当に感謝しております」
「え、や、そんな…」
「私からも言わせて下さい…。ありがとうございます」

カウンターに理子ちゃんがいる以上、必然的に黒井さんと二人になるが、こんな事言われてしまうと参る。なんなら私は最初、同化しないことに反対だったし、敵の襲撃も7割くらい私の個人的な理由だった。

「そんな…私は理子ちゃんと黒井さんと友達になれて、嬉しいんです」
「あら…私もですか」
「勿論です」

うふふ、と二人で笑う。任務自体は大変だったけど、二人と友達になれた以上、あの任務を受けて良かったと思っている。こうやって友達と休日出掛けているのも夢みたいなのだ。
そう伝えると黒井さんは嬉しそうに笑ってくれた。

理子ちゃんから包装されたリップを受け取り、少し疲れたね、ということで休憩をする事にした。
クレープの屋台があり、近くにベンチがあったのでそこで休むことにする。黒井さんにクレープは私が買ってきますから、理子様を見ていて下さいと言われ、今度は理子ちゃんと二人きりになった。
中学生で高校受験を控えている理子ちゃんは志望校に悩んでいるらしい。エスカレータ式な為、友達と同じくそのまま進学するか、私と同じ高校に行くかの二択と言っていた。す、すごく嬉しい…!でも大切な進路、黒井さんと相談してゆっくり決めなと口を開こうとした時、こちらに向かってくる男性二人に気づいた。
理子ちゃんを狙っているのだろうか。同化を拒んだ件は熱りが冷めたと思っていたけど、やはりまだ居たのか。警戒心をグッと高めいつでも術式が使えるよう準備する。

「ね、ね、君たちかわいいね。よかったら俺たちと遊びに行かない?」
「俺たち今暇しててさ、カラオケでも喫茶店でも奢るから!お願い!」

これは…ナンパというやつだろうか。攻撃されると警戒していたが、思っていたのと全然違い力が抜けてしまう。何で返せば良いのかと悩んでいると理子ちゃんが断りを入れるも尚もまだ男性は引き下がらない。

「今は他にも友人と来ていますので、申し訳ないのですが」
「その子って女の子?いいよいいよ、その子も交えて行こーよ」
「え、や、でも」

やんわり断りを入れても引き下がってくれない。理子ちゃんを私の体の後ろに隠すと、男性Aは笑いながら私の腕を掴んできた。一般人に術式を使うわけには行かないし、断っても諦めないし、どうすればいいんだ。

「理子様となまえ様に何か用でしょうか」

困り果てたその時、地の底から響くような声が聞こえた。

「えー君がこの子たちの友達?みんな可愛いね〜!5人で行こうよ」

私の腕を掴んでいたAは、今度はクレープを三つ持った黒井さんの腕を掴もうとした。
しかし、華麗に交わした黒井さんは、サッと足払いをしてAを転ばる。そして右足を振り上げ、Bにえげつない勢いの金的をーーー

「え?」
「逃げますよ!理子様なまえ様、自分のクレープ持ってください!」

渡されるがままクレープを持ち、空いた手で理子ちゃんの手を引く。そのまま勢いに任せて黒井さんについて行った。

「す、すみません…」
「はぁ………、はぁ…はぁ……な、なんで、…妾、達が、逃げたのじゃ……はぁ…」

ある程度男達が見えなくなってから、立ち止まる。完全に息が乱れている理子ちゃん。流石に私や黒井さんはまだ走れるけど、一回休憩したほうがいいだろう。

「すみません、理子様達が絡まれてるのを見て、完全に取り乱してしまって」
「いやいや、でも助かりました」

青い顔で謝罪する黒井さんだけれど、彼女のお陰で助かったのは確かだ。呪霊や呪詛師など、こちらに敵意があるものならともかく、良くも悪くも好意を向けてくる人のあしらい方は分からなかった。

「ナンパってあぁやってあしらえばいいんですね…」
「いやアレはやりすぎでしょ」

ふと後ろから知ってる声がして振り向くと、私服姿の五条サンがいた。黒井さんも理子ちゃんも驚いている中、彼は楽しそうに手を振っている。

「俺もよく逆ナンされるけど、その気がない時はキッパリ断るんだよ、あぁやってなぁなぁに反応するのが一番つけあがるから」

馬鹿だなぁと言いながら私の持ってるクレープを奪い一口食べる五条サン。まだ私も食べてなかったのに、何故最初の一口を食べるのか。

「モテる自慢とアドバイスありがとうございます」
「事実だからね。しかし、絡まれてるから助けてやろーと思ったのに…クッ…ハハ…、まさか金的とか…」

思い出し笑いをしてている五条サンから私のクレープを取り返す。上にトッピングされていた苺は見事に五条サンに食べられてしまった。

「う、うぅ…もうやめて下さい…」
「何でお主はここにいるのじゃ?」
「偶然だよ、偶然。クレープ食いにきたらナンパされてるオマエらが目についたの」

理子ちゃんと会話しながらまたクレープを奪いにきた五条サンの右腕を交わす。そのあとまた右が飛んできたが後ろに避けて距離を取る。やってよかったお兄さんとの稽古。

「つーか随分とめかし込んでんじゃん。天内も黒井さんも可愛いね」
「ありがとうございます」
「ありがと!なまえも可愛いじゃろ!」

距離が空いたので大人しくクレープを食べていると、突然私の話題になった。あの五条サンが私に対して可愛いなんていうと思えない。そんな事があったら明日は槍が降ってくる。ジロジロと爪先から頭まで私の格好を見た五条サンは、そっぽを向きながら

「ま、分家でもちゃんとした格好したらそれなりに見えるんだな」

と言った。

「すぐ分家分家って、血筋ばっか気にして大変ですね」
「五条家の後継だからな。周りがそういう環境だから嫌でも…いってぇ!天内!」

黒井さんの横にいた理子ちゃんが五条サンに蹴りを入れていた。予想してなかった人からの攻撃だったのだろう、綺麗に入った。
理子ちゃんは五条サンに対してべ、と舌を出して煽った後、私と黒井さんの腕を掴んで逃げるように走り出す。さっき走ったばっかりだけど大丈夫かな。

「あんな奴ほっとくのじゃ!今日は3人で遊ぶ日!!」

拗ねたように笑う理子ちゃんは大変可愛らしくて、心がきゅんとした。
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