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「ってわけ」
「へぇ、じゃあ俺はこいつのせいで殺されかけたわけ」
「え、私のせいですか?」

星漿体同化から三日後
私たち護衛組はお兄さんと理子ちゃん、黒井さんを引き連れて高専に集まっていた。
お兄さんからは「俺のが今どれくらいの実力か試したかった、その為に五条悟を殺した。あと金目当て。生きてるんだからいいだろ」なんて雑な説明を受けた。

理子ちゃんを凍らせてから、ざっくり夏油さんに状況説明して、お兄さんが飼ってる呪霊の中に理子ちゃんは入った。
そのまま盤星教の本山に行き、凍った理子ちゃんを見せて報酬の話をする。私が理子ちゃんを凍らせた温度はかなり低く不純物がない為、盤星教の人間が氷から出そうとしても、何日かはかかるし、その何日間かは(ほぼ)絶対安全。その間にお兄さんは手筈通りお金を貰い、その後再度本部に行き理子ちゃんを誘拐、盤星教斬滅。
凍らせた理子ちゃんを私が解凍。
理子ちゃん無事、私たちも無事、お兄さんはお金をもらえてハッピー、と言う話しだ。


いや、まぁ、うん、そうなんだけど

あっけらかんとネタバラシするお兄さん。釈然としない気持ちでいっぱいである。
オマエのせいで殺されかけた、なんて騒いでる五条サンには少し罪悪感を覚えるが、だからって私を責められても困る。
あんないきなり凍らせなくても!と訴えてる理子ちゃんには謝罪の気持ちでいっぱい。説明してから凍らせると表情でバレる可能性があるから、ってお兄さんに言われて実行したまでなんです。
夏油さんと黒井さんからはなんかよく分からない視線をビシバシと受けてるし、え?やっぱりこれ私が悪いの?

「じゃ、説明は終わり。なまえ、帰るぞ」
「え、えぇ…こんな状況で」
右に五条さん、左に理子ちゃん、二人の後ろに夏油さんと黒井さんという状況でそんな気軽に帰れるお兄さんの図太さがすごい。自分に関係ないと思ってるのだろうか。

「は?大人しく返すとでも?」

術式の構えを取る五条サン。

「いいぜ、捻り潰してやるよ」
「いやダメですけど」

五条サンの意識がお兄さんに向いたので、サクッと帰り支度を済ませる。
「うん!面倒になる前に帰ります。理子ちゃん、黒井さん、また会いに来ます。今度遊びに行きましょう」
「うむ!」
「はい」
喧嘩しそうな雰囲気のお兄さんの襟首を掴んで、面倒事に発展する前にトンズラすることにする。
ズリズリとお兄さんを引きずって教室を出ると、喧嘩することは諦めたのか、普通に歩いてくれた。


帰宅すると斎藤がいた。隣にお兄さんがいるのを見て少し驚いてたが、流石に慣れたのか一瞬足を止めただけだった。
「なまえちゃん、お茶は?」
「今はいい」
いつもなら有り難く飲んでる紅茶を断り、斎藤とお兄さんの会話を背に自室に戻る。靴下をその辺で脱ぎ散らかすな、って夫婦かよ。

ぽすりとお布団の上に落ちる。
星漿体の護衛任務、色々あったなぁ……。
目を閉じると昨日のことのように情景が浮かんでくる。
結局、天元様の同化を拒んだ理子ちゃんは「天元様を拒む」という理由により適合者から外れたそうだ。代わりに新たな適合者が見つかり、その日のうちに内密に同化が行われたらしい。
高専の先生とやらから聞いた話を思い出す。適合者から外れた、それはつまり理子ちゃんの自由を表す。

「ふふ……」

同化を拒んだ話が出回ってる最中は、万一の為に高専の護衛を受けて暮らすそうだ。その護衛メンバーに私も入れてもらえた。護衛が共にいれば出歩くのも自由だし、しばらく経って天元様の話が落ち着いたら、護衛も外れる。

「お友達、だ」

小中は学校が終わったらすぐ帰って呪術の勉強をしていたし、そんな生活を送っていたからか高校でもそんなに友達はいない。
年下のお友達は初めてかもな。考えれば考えるほど口角が上がってしまう。護衛任務は大変だったけど、沖縄旅行は楽しかった。理子ちゃんとはまた旅行行こうと言う話があがってる。
次はどこに旅行に行こうか。
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