君だけに見せる姿



俺の恋人は…聞いた話ではゲスで有名な霧崎第一の花宮真さんだ


聞いた話というのは俺がその姿を見たことがないから


俺の前では俺のことを甘やかしてくれる良い彼氏さんというイメージしかない


真逆のゲスい所なんて見たことがない


試合があっても見に来るなとかは言われけどそれと関係あるのかな?


そんな花宮さんと今日はデートである


こんなことしてくれる彼氏がゲスいなんてことあるわけないよね


俺は花宮さんの優しい所しか知らない


そうあのときまでは


花宮さんと街へ出かけているときに偶然、誠凛さんとこの木吉さんとあった


「花宮さん。あの人って木吉さんじゃないっすかー?」


「えっ?はぁ!?」


「っ!?」


俺が声をかけると急に花宮さんが大きな声を出したから驚いた


「どうしたんすか?」


花宮さんの顔を覗き込みながら聞くと俺の腕を引きながら元来た道を戻ろうとした


「へ?花宮さん!?」


その声に木吉さんは気付いたらしくこちらへ寄って来た


「おー、花宮ー!」


大声を上げながら寄って来ようとする木吉さんから遠ざかるように花宮さんは前へ急いでいた


「あの、花宮さん!呼んでますよー?」


俺の声に反応したのか止まったがなにやらボソボソと言っていた


「何でここで、よりによってあいつに会うんだよ…」


小声だったが俺の耳には微かにだけど聞こえてきた


「花宮!逃げるなんて酷いじゃないか!」


止まったことで追いついた木吉さんが花宮さんに文句を言っていた


「おっ、君は確か秀徳のPGだよな?」


俯いている花宮さんが気になったが声をかけられた


「はい、高尾和成です。木吉さんすよね?誠凛の」


「あぁ、そうだよ」


俺達が話している間、花宮さんは無言のままだった


というか意図して木吉さんの方を見ないようにしているように見えた


「ところで、なんで花宮と高尾君が一緒にいるんだ?」


確信を突かれた質問をされ、少し焦った


付き合っていることは俺達しか知らないし、秀徳と霧崎、しかも学年も違うため接点が見つからないだろう


共通点と言えばPGなとこだけだ


その質問にどう答えようか迷っていると無言だった花宮さんが動いた


「別にお前に関係ねーだろ。友達でも何でもないのに話しかけてくんなよ。ばぁか」


花宮さんの発言がいつもより棘があるように聞こえた


「つれないこと言うなよ、花宮。無冠同士仲良くしようぜ?」


「やだね。それに俺は無冠とかどうでもいいし、お前らと同等に見られてるとか虫唾が走るんだよ」


目の前にいるのが本当に俺の恋人の花宮さんなのか分からなかった


「相変わらず花宮はキツイな」


そんなことを言われているのに笑っている木吉さんがおかしく見えた


花宮さんの方を凝視していると視線に気付いたのかこっちを向いて柔らかく微笑んだ


その笑顔を見た瞬間ホッとした


「花宮もそんな顔するんだな」


感心したように言う木吉さんの声を聞いた瞬間、嘲笑うかのような顔をした花宮さんがいた


「何勝手に見てんだよ。お前に見せるために笑ったんじゃねーよ」


このままでは埒があかないと思い木吉さんから離れることにした


「は、花宮さん!今日は俺と出掛ける約束でしょ?だから、早く行きましょ!」


花宮さんの腕を引っ張りながら言うとそんな俺を見てまた優しく微笑んだ


「あぁ、行くぞ」


そう言って俺の手を繋ぎながら木吉さんがこちらへやって来た方向へと向かった


「あっ、木吉さん!また戦いましょうねー」


手を振りながら言うと振り返してくれた


「おう!またやろうな!」


笑いながら答えてくれた


その姿を見ていると花宮さんの方へ引き寄せられた


「ふぇ?」


「彼氏がいるんだからこっち向いてろよ」


少し拗ねたように言う花宮さんが可愛くてさっきまでの姿が嘘のように思えた


「俺はいつも花宮さんしか見てませんよ?」


少し背の高い花宮さんを見上げながら言うと俺の指に自分の指を絡ませながら


「俺も高尾しか見てねーよ?つーか、高尾以外目に入らないし」


笑いながら言ってくる花宮さんがかっこよすぎて顔が赤くなるのが分かった


「高尾、顔真っ赤。本当可愛い」


クスクスと笑いながら俺の頭を撫でてきた


「うぅー…」


花宮さんの肩に顔を埋めながら唸っていると


「今日何したい?お前のしたいこと優先するから」


頭を撫でながら言ってくる花宮さんに今日は俺がとことん甘やかしてやる!と思い


「花宮さんの家に行きたい…」


ボソボソと言うとしっかり聞こえていたようで


「分かった。…たっぷり甘やかしてやるよ、和成」


「っ!?/////」


こんなときに名前呼ぶとか


「…俺も、真さんのこと、甘やかしたい…」


「ばぁか。俺は可愛い俺だけの和成を甘やかしたいんだよ」


俺のことをぎゅっと抱きしめながら耳元で囁いた


「だから、黙って俺に甘やかされてろ」


「////はい」


にっこりと笑いかけてくる花宮さんに了承の返事以外何も言えなくなってしまった


俺の彼氏は俺だけのために優しく甘やかしてくれる


そんな花宮さんが他の人からは良く思われてなくても俺にとっては大事な恋人


それだけは確か


(俺だけのあなたでいてください)



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