温もりを抱いて

(※桐皇高尾ちゃん)


「大ちゃーん?」


俺の腕の中にすっぽり埋まりながら声の主が話しかけてきた


腕の中にいる奴は俺と同じ桐皇に通うバスケ部での今の相棒だ


さっきまで大人しくしてたのにどうした?と思いながら返事をしてやった


「んー、何だ?カズ」


「いやー、この状況はどういうことかなー?って思って」


カズの前に回っている俺の腕を掴みながら聞いてくるカズの頭に顎を乗せた


「別に、何か変か?」


「いやどう見ても変でしょ」


俺の腕の中から逃げ出そうと暴れるカズを逃がさないように腕に力を込めると大人しくなった


カズが言いたいことも分かる


さっきまで寝ていたから状況が読み込めなかったんだろ


俺の隣で雑誌を読みながら眠そうにしていたカズが寝たのを確認してから腕の中へ引き込んだ


「大ちゃん」


「んぁ?」


「離してくれると嬉しいなー?なんて」


「やだ」


「やだって…」


カズ抱きしめてるとあったけーし、なにより…


「今日は抱きしめてたい気分だから駄目だ。だから大人しくしてろ」


「なっ、横暴でしょ…」


「いいだろ。俺がそうしてーだから」


俺の言葉に顔を俯かせながら小声でブツブツと言っていた


「でも…この体勢は、やだ…」


本当に小さな声だったのでカズの方に顔を近づけて聞こえたのはなんとも可愛い文句だった


「ははっ、可愛いこと言ってくれんじゃん」


耳元で囁いてやるとカズの耳が赤くなったのが分かった


「もうっ…大ちゃん黙ってて」


自分の顔を両手で隠すカズが気に入らなくてその腕を掴んで無理矢理こっちを向かせた


「っ!大ちゃ…」


「俺のこと見ろよ、カズ」


そのままカズの体の向きを変え俺の方に向かせた


「だい、ちゃん…?」


「たまには俺に甘えろよ」


カズの後頭部に腕を回し俺の肩に顔を埋ませ、頭を撫でる


「な?」


頭を撫でながらカズの方に顔を向けるがその表情は見えなかった


耳が赤いのは丸見えだったがな


「おい、カーズー?」


声をかけるが相変わらず顔を埋めたままで一向にこっちを見ない


おい、俺を無視とはいい度胸じゃねーか


「うわっ!?」


いい加減だんまりに耐えられなくりカズを抱き上げ後ろにあったベッドに下ろした


「えっ?ちょっ!大ちゃん!!」


そのままカズを押し倒し、俺も横になりながら正面から抱きしめた


「大ちゃん、何これ…?」


理解できないという顔をしながら問いかけてきた


「お前が返事もしないし、俺の方見ないから悪いんだろ」


カズの頬っぺたに手を当てながらニヤリと笑ってやると


「うわぁ、極悪人面…」


と言ってきたため手を当てていた頬っぺたを引っ張ってやった


「どの口がそんなこと言ったんだー?」


「いひゃっ!いひゃいよっ」


俺の手を外そうと腕を掴んで抵抗してくるカズを見ながら少し遊んでいると、いよいよ本気で痛くなってきたのか目に薄っすらと涙の膜ができていたため止めてやった


「手加減してよっ!もう、痛かったー」


少し赤くなった頬っぺたを撫でてやるとさっきまで抓られて不機嫌になっていた顔が緩み、撫でられるのが気持ちいいのか笑っていた


間抜け面して可愛いな


そんなカズの顔を見ながら笑っていると気付いたのかこっちを見てきた


「大ちゃん」


「何だよ」


「ううん、呼んだだけー。えへへっ」


俺の名前を呼んで返事をしてもらえて嬉しかったようでふにゃりと笑ったカズを抱きしめた


「ふぇ?」


「寝るぞ」


「え?俺さっき寝たばっか…」


「俺が寝みーから寝る」


「だから、横暴」


「いいから、お前は俺の傍にいればいいんだよ」


「…ふふっ、はいはい分かりましたよー」


茶化してくるカズにデコピンをしながら目を閉じた


「おやすみ、大ちゃん」


カズが俺にそう言ってきたことは覚えてる


こんなに早く寝れるとか、カズが一緒にいるからかもな


俺の傍にいるこの暖かい温もりを手放さないように抱きしめているであろう腕に力を込めたことは夢か現実か


(夢なわけないよ、大ちゃん)



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