二人だけの時間

「大我ー、これ切っていいの?」


「お、おう」


今日は和成が俺の家に泊まりに来ている


いつも俺だけが料理をするんだけど、今日は俺も一緒にやりたいと言われたため一緒にキッチンに立っている


だけどさっきから俺は不安でしょうがない


簡単にカルボナーラでも作ろうと思い食材を出すと和成が自分が切ると言わんばかりに包丁を取り出したので少しというかすっげー心配だった


こいつハイスペックとか言われてるけど料理関連の話は聞いたことないからな


なりにより今玉ねぎを切っている和成の手元が危なっかしい


支えている指をちゃんと丸めていなかったり、切りながら話しかけてくるもんだからこっちはハラハラして落ち着かなかった


「大我、フライパン温まったー?」


こっちを見ながら切るな!


「だ、大丈夫だからっ!手元ちゃんと見ろ!」


「大丈夫だって〜。真ちゃんじゃあるまいし、そんな不器用じゃねーよ」


いや俺から見れば、お前も大概だと思う


チラチラと和成の方を見ていると当然、鷹の目で見えている和成が


「なーにー?どうしたの?たいがー」


包丁を休めて俺の方に寄ってくる和成が少し舌っ足らずに俺のことを呼んだ


その様子が少し可愛くて笑いながら和成の頭をわしゃわしゃと撫でてやった


「わっ!ちょ、何?」


ぐちゃぐちゃになった自分の頭を直しながら不満そうに見上げてきた


「後で構ってやるから、早くそれ切っちまえよ」


そう言って額にキスしてやると顔を少し赤くして


「うぅ…これだから帰国子女は…」


とブツブツと良いながら元の場所に戻って行った


それからも和成は俺に話を振りながら切るから和成の手元から目が離せなかった


そんな俺に和成は「何そんなに見てんのー?」とか「もう少しで終わるから待ってて」と言ってくるが俺が心配してんのはそこじゃないとは言わなかった


「大我、全部切り終わったよ!」


包丁を置いてこっちを振り向きながら褒めて褒めてという様に期待の眼差しを向けてくるからまた頭を撫でてやった


その行為に気持ち良さそうに目を細めて受け入れている和成を見て抱きしめたくなったけど今は料理中と思い留まった


和成が切った食材を渡してもらいフライパンで炒めているのを使った物を洗っている和成が横目で見てきていた


「どうした?」


「いや、相変わらず手際いいなって思って」


感心したようにうんうんと首を上下させながら言う和成が少しおかしかった


笑いながら


「まぁ、一人暮らししてたら嫌でもこうなるんじゃね?」


と言うと


「そんなもん?俺的には大我に料理の才能あったからだと思うんだけどなー」


洗い物を片付け終わった和成にフライパンを温めていたのと同時にパスタ用に温めていた鍋の様子を見てもらった


その間に生クリームを入れて煮詰めた


「大我、あと何分ぐらいだっけー?」


「ん?どれ」


鍋を覗き込みパスタを一つまみ出し食べてみると丁度いい硬さだった


「もういいな。和成火止めていいぞ」


「りょうかーい」


和成が火を止めたのを確認しながら、パスタをフライパンに入れた


「おぉー」


目をキラキラさせながら俺が手元を見ながら感激していた


「すっげー、カルボナーラになった」


「当たり前だろ、レシピ通り作ってんだから」


あまりに和成がカルボナーラに視線を送っているので


「味見するか?」


と聞いてみると嬉しそうな顔を向けてきた


「いいの!?」


「お、おう…。口開けろ」


素直に口を開けた和成の口の中に入れてやると幸せそうな顔をして


「美味い!大我、これ美味いな!」


と満面の笑みで言ってくるので素直に嬉しくなった


「おう!thank you!!」


「出たwww帰国子女wwwww」


俺の英語に笑いだす和成の頭を撫でて取り分ける皿を渡した


和成が取り分けている間に手早くサラダを作りリビングに持っていくといつ作ったと!?と言わんばかりに驚いた顔を向けてきた


「「いただきます」」


食べ始めても和成は話していたが、物を入れているうちは大人しかった


そして


「やっぱり、大我の作ってもらう物も美味しいけど、2人で作った方が楽しいしもっと美味しくなるな」


俺に笑顔を向けて行ってくる和成に今度は遠慮することなく抱きしめた


「え?た、大我っ!?どしたの?」


不思議そうに見上げてくる和成に腕の力をもっと強めた


「んっ、大我苦しい…」


「わりぃ!今はなs」


「離さなくていいから!だから、もう少しこのままでいさせて」


俺の背に腕を回しながら微笑んできた


「…おう」


そうしてしばらくの間和成を腕の中に抱きしめていた


もしかしたら今日一緒に料理したいと言ったのは少しでも俺の傍に長くいたいと思ってくれたからかと自惚れてみた


(お前とずっと一緒にいたい)



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