充電させて
マリンは目を覚ますと、
見慣れないベッドに寝ている事に気が付き
一瞬、ぎょっとしたが
我愛羅の部屋に泊まっていた事を思い出し、
辺りを見渡した。

昨夜、隣で添い寝しながら
マリンの頭を撫でていたはずの我愛羅の姿はそこに無く、
リビングの中央にあるソファに座って居るのが見えた。

マリンはベッドから降りて
そっと我愛羅に近づくと
我愛羅は頭を少し傾けて、
穏やかな寝息を立てていた。

机の上には書類が散らばっており、
自分が寝てしまってからも
我愛羅は遅くまで仕事をしていた事を
マリンは悟った。

マリンは近くにあった毛布を
我愛羅にそっとかけ、
隣に腰掛けると、
以前より少し伸びた我愛羅の
綺麗な赤髪をそっと撫でた。

『お仕事、お疲れ様…』

ゆっくりと我愛羅の瞼が開いて
寝起きで、まだボーっとした
淡いグリーンの瞳が
マリンの姿を捉えた。

『我愛羅、おはよう。
ごめんね、起こしちゃった?』

「ん…マリン…」

我愛羅は掠れた声でマリンを呼びながら
マリンの後頭部に手を回し
引き寄せると、柔らかい唇に吸い付いた。

「おはよう。」

唇を離した我愛羅は
柔らかく微笑むと、マリンの頬を撫でた。

『…お、はよ。』

我愛羅の寝起きで掠れた声と
こちらを見詰める優しい瞳に
マリンの胸はドキリと音を立てた。


『我愛羅ベッド使っちゃってごめんね、
ありがとう。』

「ああ、かまわない。」

再び我愛羅がマリンの唇に
視線を落とした時、
扉からコンコン、とノックの音が部屋に響いた。

「風影様、雲隠れの里から
至急返事が欲しいとの手紙が来ています。」

「…ああ、すぐ行く。」

チラリとこちらを申し訳なさげに
見た我愛羅に、マリンは
『私も、そろそろ帰るね、』と告げた。

「もう行くのか?」

『うん、我愛羅もお仕事あるだろうし、
綱手様がちゃんと書類整理出来てるか心配だしね(笑)』

「…そうか。
見送りに行けなくてすまない。」

『ううん、平気だよ。
我愛羅、無理し過ぎない様にね。
私にも出来る任務があったら言って?
いつでも手伝うから。』

「ああ、ありがとう。
お前も無理しないように。
何かあったらすぐに言え。」

『うん、じゃあ、行くね…』

そう言って立ち上がったマリンの腰を
我愛羅は掴んで引き寄せた。

『わっ、』

いきなりの事で抵抗する間もなく
そのままストン、とマリンは
我愛羅の膝の上に座らされた。


我愛羅はマリンの腰に腕を回し、
後ろからぎゅっと抱き締めると、
甘える様にマリンの背中に頬をすり寄せた。

『我愛羅?』


「…充電、させてくれ。」



マリンは自分のお腹の前で組まれた
我愛羅の腕に手を重ね、
背中から伝わる我愛羅の温もりに
目を閉じ、しばらく身を委ねた。



18/32
<< bkm >>