離れ際の攻防







公園を出た二人は
マリンの宿泊する宿に向かう為、
夜道を歩いていた。


宿までの道は
心地よい沈黙に包まれていたが
お互いの手はしっかり握られていた。



何を話すことも無く、
あっという間に宿の前に到着した。




「明日、朝8時に迎えにくる」

『うん。ありがとう。』


二人の手はまだ繋がっていた。
離さなきゃ…とはお互いに思うものの
離せない。

そんなもどかしい攻防を
断ち切ろうとしたのはマリンだった。


『じゃ、じゃあ、おやすみ、我愛羅』


手を離そうとしたマリンの手を
我愛羅は逃がさない様に強く握ったと思ったら
次の瞬間には自分の方へ引き寄せた。

『えっ、うわ!』

マリンはバランスを崩し、
我愛羅の方に倒れ込むが
大きな硬い胸板に抱きとめられた。


『が、が、我愛羅っ』


ぎゅっと我愛羅の腕がマリンを抱きしめる。


「マリン、おやすみ。」


耳元で聞こえる我愛羅の優しい声に
マリンは背筋をゾクリと震わせた。


離れ際に我愛羅はマリンの頭を
くしゃっと撫でた。

『お、やすみ…』

真っ赤な顔をしたマリンは
くるりと宿の方を振り返り、
おぼつかない足取りで宿に入っていった。

そんなマリンを見送っていた我愛羅は
ふと自分の頬を触ると
だいぶ熱を持っていた事に気が付いた。



「…暑いな。」




冷え込んできた夜に不釣り合いな言葉を
呟き、ほし星が輝く夜空を我愛羅は見上げた。




 

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