またすぐ会いに行く




「マリン、気をつけてな
また、いつでも来い。」

「マリンなら大歓迎じゃん!」

「…」


砂の里の門で
三姉弟がマリンを見送っていた。


『うん!テマリ、カンクロウ、我愛羅、お見送りありがとう!
木の葉にも遊びに来てね!』

テマリと我愛羅はピクリと同時に眉を潜めた。

テマリは昨日までマリンが我愛羅の事を
我愛羅くんと、呼んでいたが、
今、間違い無く我愛羅と呼んだからだ。

我愛羅は姉弟二人とマリンが
前よりも親しげに会話している事に疑問を持った。




昨日、式が終わってから
いきなり姿を消した我愛羅だったが
家に帰ってきたと思ったら
どこかに思いを馳せているのか、
ぼーっとしたり、かと思ったら顔を赤くしたり
忙しなくしていた弟の様子を
テマリはゾッとしながら観察していたのを
思い出した。

テマリがマリンにチラリと
意味ありげな視線を向け、顎で
我愛羅をクイ、と指すと、何かを察したマリンは
照れた顔で頷いた。

「マリン、今度、詳しく聞かせてくれよ?」

ニヤニヤとテマリがマリンに近付き、
耳元でヒソヒソと話した。

『ふふふ!うん、テマリもね!
私も応援してるよ』

「「??」」

二人で笑い合う女子に
置き去りにされた男子二人は
ポカンと、その光景を見つめる事しか出来なかった。


『よし、じゃあ、行くね』

マリンは我愛羅に視線を送ると、
いつもの無表情だった。

寂しさを紛らわす様に、
3人にバイバイと手を振り、
門を背にした時だった。


「…おい、あれはなんだ。」

切羽詰まる様な我愛羅の声が聞こえた。

『??』


振り返ると、
後方を指さす我愛羅の背中が見えた。
テマリとカンクロウが
なんだ?と我愛羅につられる様に
後ろを振り返った瞬間、
我愛羅がくるりとマリンの方へ
振り向くとマリンの腕をとり、引き寄せた。


「また、すぐ、会いに行く」


耳元で我愛羅が囁いた声が聞こえたと思ったら、
次の瞬間、マリンの頬に
柔らかいものが押し付けられた。

『え、』

ぱっと、何事も無かったかのように
我愛羅はマリンから離れた。

ほんの一瞬の出来事だった。

マリンは時間差で
我愛羅に頬へキスされた事に気が付き、
みるみる顔を真っ赤にさせた。


「おい、なんの事だ?」
「なんだよ、我愛羅、なんもないじゃん」

二人がまたこちらに向き直ると
耳を赤くしながら
愛おしそうにマリンを見つめる我愛羅と
顔を真っ赤にして頬を抑えるマリンがいた。


テマリは、何かを察し、ニヤリと笑う。
対照的にカンクロウは
未だに我愛羅が何を指さしたのか
気になる様子でチラチラと我愛羅と
後方を見比べていた。


「ああ、すまない。
気のせいだった様だ。」


イタズラをした子供の様な顔で
我愛羅はあっけらかんと言ったのだった。



マリンは真っ赤な顔のまま
今度こそ三人に別れを告げると、
赤く染まる顔を見られまいと、
そそくさとその場をさった。
テマリが後ろでクスクス笑っている事に
マリン気付かないふりをした。








「またすぐ会いに行く」



木の葉の里へ向かっている道中、
マリンはしばらく頭の中から
離れてはくれないであろう
我愛羅の先程の低い声を思い出しては
今までに無いほど胸を高まらせた。


『我愛羅が言うと、
本当にすぐ会える気がするから不思議。』



"友達以上"となった
我愛羅に思いを馳せながら
マリンは、いつの間にか視界に入った
「あん」と大きく書かれた門に向かって
勢い良く走り出したのだった。





『ただいまー!!』





女神に恋をした。END



 

  menu画面へ