浴衣の着付けは難しい





火影が亡くなってから
2年と少しが経ち、マリンはもう18歳になっていた。

マリンは里の丘の上にある
育ての親でもあった
祖父、猿飛ヒルゼンの墓の前に立っていた。

木の葉崩しは、失敗に終わったが
4代目火影は大蛇丸に命を奪われた。
砂隠れの里は大蛇丸に騙されていた事が判明し、
疑惑もとけ、木の葉と再び同盟を結んだ。
黒幕であった大蛇丸はマリンがまさしく一瞬で片付け、
世の中は平和そのものだった。


木の葉崩しの後から
マリンは死に物狂いで働き、必死に火影の穴を埋めた。
何日も里に帰らずに危険な任務をこなした事もあった。
その甲斐もあり、
木の葉は今まで以上に他の国からの評判も上がり、
最高の地位を築き上げていた。


マリンは祖父のお墓を手洗いで綺麗にする。
あえて力は使わない。


『おじいちゃん、今日もいい天気だね、
今日はね、大きなお祭りがあるんだよ。
ナルト達に誘われたんだ。
私は毎日楽しくやってるし、
綱手様が頑張って里を盛り上げてる。
だから、なーんにも心配いらないよ。』

マリンはイノの店で買ってきた花を
墓の前にそっと置いた。

『あ、あと、寂しいから
たまにはおじいちゃんからも
私に会いに来てね、
おじいちゃんなら枕元でも大歓迎。』

よし。と、ピカピカになったお墓に
満足してマリンは腰を上げた。

「マリン」

後ろから聞こえた声にマリンが振り返ると
カカシが立っていた。

『あ、お兄ちゃん!』

「お祭り行くんでしょ?
お兄ちゃんが着付けて上げようか?」

『いいや…って言おうとしたけど、
少し手伝って欲しいな。後ろとか、届かない所。』

「よしよし。
浴衣着たら超絶可愛くなっちゃうだろうなぁ〜
変な虫がつかないか、お兄ちゃん心配、」

『浴衣着るだけで可愛くなれるなら、
毎日浴衣着たいよ〜』

(ゲラゲラと笑う、この子は
きっと自分の魅力に気付いていないんだろうな。

ここ最近、マリンは外見のみならず
内面もぐんと成長した。

育て親の死は相当応えただろうに
それを返上するように精一杯動く彼女に、
誰もが心を打たれ、
自然と里を一つにまとめていったのだ。
女神様の子だっけ?
いや、もうこの子は立派な女神様に見えるよ。
兄として誇らしいばかりだ。)

妹のツルツルキューティクルの
髪の毛をカカシは無意識に撫でた。






「あー、マリン!遅いって…ば、よ」

『ごめん、ナルト、みんなも!
着付けに手間取っちゃった!!
浴衣って難しいね〜!!』

浴衣姿のマリンに
同期一同は釘付けになる。

『え!変な所ある!?治して!』

(((美しい!!!!!)))

「あっ、いや、別に!」
「そんなことなくもなくもない〜?」
「いや、マリンさん、素晴らしいです!」
「合掌」
「マリン!綺麗よ!!女の私でも見惚れた!」
「マリンちゃん、綺麗!!」

『え…そそそそんなことないよ!
着物が綺麗だからそう見えるのかな!?
お兄ちゃんにお礼言わなきゃ!!』

(((マリンの隣は譲らねぇ!)))

次の瞬間、
男達は見えない火花を散らした。

「マリン!チョコバナナあるってばよ!
一緒に買いにいかね!?」
「いや、マリン、焼きそばだよな。」
「マリンさん、お好み焼きですよね!」
「綿あめもあるぞ!」

(全くこのガキらは…ん?このチャクラは…)

神龍が周囲を見渡すと同時に
凛とした声が響いた。


「マリン?」





 

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