姉と兄




【マリンside】




『砂と音が裏切り?』

「はい。」

翌日、買い物をしていたマリンの元へ
上忍仲間の忍が慌てて駆けつけて、
木の葉が危機的状況にあることを伝えた。


(マリン、一尾が暴走してる。)

『我愛羅くん…』


急いで我愛羅くんのチャクラをたどるが
いつもと様子が違う。

ナルトもいる?

(双方消えたな、決着がついたんだろう)

駆けつけると、我愛羅くんとナルトが
傷だらけで倒れていた。

『我愛羅くん!ナルト!』

影分身をナルトへ
本体は我愛羅の元へ。
その行為はほぼ無意識であったが、
神龍がクスクス笑っていた。
こんな時に何がおかしいんだ。全く。

『我愛羅くん!』

「…マリン…俺は…」

『ごめんね、来るの遅くなっちゃった。
すぐに治してあげるから、我愛羅く…』

我愛羅の手がマリンを制した。

「俺は、弱い、ひとりでよがって…
おまけに昔からマリンに守られてばかりだ…
何も変わってない…そこにいる、
うずまきナルトに気が付かされた…」

『我愛羅くん、私はっ「我愛羅!!」

砂の忍二人が我愛羅くんにに駆け寄った。

「大丈夫か、我愛羅」

「テマリ、カンクロウ、
…すまない。」

我愛羅の言葉に二人は、ハッとして、
やがて穏やかな表情に変わっていった。

「今更、何言ってんだ、
それを言うなら私らこそ…」
「俺らは姉弟じゃん」

『(ああ、大丈夫そうだ。)』

マリンは三人を見て素直にそう思った。
枯れたと思った花が
再び鮮やかな色を取り戻した時の様な気分になった。

我愛羅は
穏やかな目を姉と兄の二人に送ると、
フッと、意識を落とした。

「我愛羅!!」
「完全にチャクラ切れじゃん」

マリンは再び我愛羅に近寄った。

『すみません、治療してもいいですか?』

「あ、ああ!あんた昨日の…」

「あ!特別上忍試験の!クソ強ぇ女!
その後我愛羅と抱フガッッッ!!」

女の人が何か言いかけた男の人をいきなり殴った。
ずいぶん仲いいんだなぁ…

『??は、初めまして!
マリンです。我愛羅くんとは
小さい頃からの友達で』

驚いた顔の二人。

「姉の、テマリだ、
こいつは弟のカンクロウ、
まぁ、なんだ、我愛羅がこんなに
心を開いてる奴は初めて見たよ。
これからも、弟をよろしく頼むよ」

『我愛羅くんの
ご姉弟の方だったんですね!?

はい!もちろんです

とりあえず、傷は消えました。
チャクラもだんだん回復する筈です
今日中には目を覚ますかと、
見守っていてあげていて下さい。』

「驚いた、元通りじゃん!」

「医療忍術が使えるのか?」

『いや、忍術ではないかもですね。』

「??とにかく、ありがとう。
…私らは木の葉を裏切った形になっているだろうが、
信じてくれとは言わない。
こんな事になるなんて知らなかった。
本当にすまない。」

「大丈夫です。
ちゃんと分かってますから。」

「!!信じてくれるのか!!」

『もちろんです。
我愛羅くんはそんな事絶対にしない。
それに、あなた方の目を見れば分かります。
嘘はついてないって。
里の事は私達に任せて下さい。

お2人は、
我愛羅くんをよろしくお願いします。』

「ああ!マリン!本当にありがとう。

今度、ゆっくり話したい。
よければ…友達として。」

『!!はい!よろこんで!』



テマリはマリンと固い握手を。
カンクロウはマリンを見ながら終始、顔を赤く染めていた。
我愛羅は、穏やかな表情で眠っていた。

『(また、会おうね。我愛羅くん。
しばらく、ゆっくり休んで。)』

マリンは我愛羅に優しい眼差しを
送り、去っていく3人の背中を見送った。







【我愛羅side】



「我愛羅、大丈夫か。」

目を開けると俺は自室のベッドにいた。
テマリとカンクロウが心配そうに見つめている。

「ああ、」

よく見ると、傷だらけだった身体は
元通り、むしろ前よりも肩が軽いような感覚だ。
不思議に思っていると、
カンクロウが口を開いた。

「マリンが治療してくれたじゃん」

「…そうか、」

また、お前に守られたのか、俺は。

首元のネックレスをぎゅっと握った。

「マリン、いい奴じゃないか。
いい友を持ったんだな、我愛羅。」

テマリが暖かい目で俺を見つめていた。

「ああ、」

「それに、強ぇくせに結構、か、可愛いし。
俺まぁまぁ気に入ったじゃん!」

反射的にカンクロウを睨むと、
ギクリと、肩を震わせていた。

「いつの間に、
木の葉の友達なんか作ったんだ?」

テマリが不思議そうに俺を見る。

俺は昔の記憶をぽつりぽつりと
話し始めた。

マリンとの出会いを。

3人の間には、今まであった、
ぎこちない雰囲気はもう一切なく、
まさしく「姉弟」そのものだった。


これもマリンのお陰なのだろうか?






それからしばらく経ち、我愛羅は
何度か木の葉の里に足を運んだ。

マリンに会うためだ。

マリンの姿を探したが
1度も会うことが出来なかった。

そのまま月日は流れていったが
我愛羅はマリンの事を考えない日は無かった。


「マリン…どこにいるんだ。」




 

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