胸がぽかぽか暖かい




【我愛羅side】


来るな怪物!
この公園はお前みたいな怪物が来る場所じゃないんだぞ!
帰れ!帰れ!

(ああ、まただ…)

(悲しい。辛い。苦しい。
僕も皆と一緒に遊びたいだけなのに)

(僕は1人ぼっち)


…帰ろう。
地面を見た時だった。


『こーんにちは〜!!』


暗い空間に眩い光が差し込んだ様な気分だった。
僕は声のした方向へ振り返った。

「あっ…」

僕は思わず声を上げた。
昼間、偶然見かけた
花を生き返らせた女の子だった。

『仲間にいーれて!』

女の子はこちらに駆け寄ってきた。
ふわりといい香りがした。

あれ?なんだろう?

僕の中であいつが静かになった。
ふつふつと湧いていた
ドロドロした感情がサーッと引いていく。
初めて味わう不思議な感覚だった。

「誰だよお前」

「そいつに近づかない方がいいぜ
そいつ変なやつだから」

1人の男の子が僕を指さした。

ズキン…胸が痛い。

くるりと
大きな目と目が合った。
僕は目が逸らせなかった。
なんで?わからない。吸い込まれそうだった。
でも何故か逸らせなかった。

『わぁ〜綺麗〜!!』

僕をじっと見つめてた女の子は僕に微笑んだ。

『目の色綺麗だね!!
こんな綺麗な目の人初めてみた!』

「…えっ?」

女の子は誰に言ってるの?
僕を見ながら、僕の目を見ながら言ってる。
僕に言ってるの?


「…ぼ、僕に言ってるの?」

『?そうだよ?』

なんで?
とでも言う様にこちらを見つめる女の子。
僕は胸がぎゅっとなった。
今までみたいな痛いのじゃなくて、苦しい。
顔が暑い。ドキドキと心臓が動きを増す。
なんだろう…これ。

『ねぇねぇ、みんな一緒に遊ぼう!』

「ありえねぇー。みんな行こうぜ」

ぷいっと目を逸らして
男の子達は離れていった。

『ええ!なんで?!』

そうだ、僕はいつまでも1人ぼっち。
君もどうせあっちに行っちゃうんだ。

ズキン…

(嫌だ…行かないで…)

僕は心の中で叫ぶ。

『行かないよ』

女の子は僕を見つめていた。

「え、」

ドキン。僕の心臓が大きく跳ねた。
僕、声には出してないのに。

次の瞬間ふわりと髪を撫でられた。

「っ…!!」

『髪も綺麗な色してるんだね!』

僕は女の子のニコッと笑った顔を見て
また顔が熱くなった。
とっても可愛いし、優しい笑顔だった。
初めて他人から向けられた表情だった。

「僕が怖くないの?」

『怖い?なんで?全然怖くないよ?』

「僕の中には…」

『本当はいい子だよ、きっと。
神龍の言う事聞いて大人しくしてるもん。』

「神龍…??」

『私の中にも大きいのいるんだよ。
同じだね!』

!!

信じられなかった。
開いた口がふさがらない。

「じゃあ、君も、…夜眠れないの?」

『夜?いっぱい寝てるよ?』

「そっか、僕は、怖くて眠れない…」

ふーん、じゃあさ!
と顔を輝かせた女の子。

『今日、子守唄歌ってあげる』

ふわりと、また頭を撫でられた。

「マリン」

女の子の後ろには
木の葉の額当てをした銀髪の男の人が立っていた。

「そろそろ行こうか。
火影様が心配するよ。」

『あ!カカシお兄ちゃん!』

女の子はバッとそっちにかけていってしまった。

あ…

「(待って…)」

女の子の背中に手を伸ばして
僕は引っ込めた。

『あっ!!!』

僕が諦めて帰ろうとした時、
女の子が思い出した様に
こちらを振り向いた。

『ねぇねぇー!
君、名前なんて、言うの?』

「えっ…が、あら。」

『えー??聞こえないよ!』

「我愛羅!!」

自分でもびっくりするくらい大きな声だった。

『があら君!!
私はマリンだよ!またね!』

バイバイ〜!と手を振るマリン。

「マリン…」

女の子の名前を呟くと
じわり、と胸が暖かくなった。


初めての感覚だった。





 

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