「おいクリス、危ねーぞ」

俺が彼女の言葉に度肝を抜かれているという緊張感の中、全く緊張感の無い声が俺の頭の左かなり遠くから響いた。そして、ばんばん、とふたつ銃声が鳴り響いた。

「あっぶな! 銃は痛いからやめろって!」
「っちょ、何してるんですか師匠! クリスさんもそういう問題じゃないでしょう!」
「……」

今日もアレンの突っ込みは冴え渡る。しかし気にした様子も無く、奴  クロスは、呆れたように煙草をふかした。

「アンタ、秘密の一つや二つくらい暴露されて動揺してんじゃねーよ。コイツは敵、クリス・アスフォードの天敵・千年伯爵の家臣だ。それともなに、アンタはそれを知られたら俺達が軽蔑するとでも思ったのか? だとしたら、アンタはこの七十年間なーんにも学んでねェ」

アンタが俺達に嫌われたくないと思ってんなら、俺達もそうだろうが。
そう言って、クロスは吸い切った煙草を空に投げた。

  
- ナノ -