「貴方がイノセンスと適合したお陰で犠牲となった人は数知れず……さぞ、虚しいでしょうね」
「黙れ」
「良いことをしていると思っているのに、貴方は無意識に他人を見殺しにしているのよ」
「だまれ、」

「全く、クリス・アスフォードはとんだ殺人鬼だわ」

否定できないのが、怖い。

およそ七十年前、俺は「聖女」の血縁者として教団に連れて来られた。イノセンスを体内に取り入れて行われる強制シンクロ。その“最後の”被験者として選ばれた俺は、あの日、あの時永遠を手に入れた。

俺の実験が成功してから、中央は目の色を変えて実験を再開した。俺のほうも、初めは底辺の底辺を彷徨っていた適合率も、中央からの命令で一日中イノセンスを発動していたら、気が付いたら百パーセントをも超えていた。
その頃はそんなことにも興味は無かった。ただ、命令されただけアクマを狩って、イノセンスを回収するだけ。

いいことをしているつもりだった。それは善意からの行為で、誰に避けられようと俺は俺のするべきことをしていけばきっとこの戦争は終わると、あのときは信じていたのだ。

  
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