「そろそろ大人しく寝たらどうですか」
「……友が苦しんでるってのに、暢気に寝てろって言うのか婦長は」

手術が終わり、残りの輸血の管も通ってはいるけれども、ケビンは一般病室に移った。彼はまだ、目覚めない。

ケビンのイノセンスは消えてしまったらしい。へブラスカはケビンの体を一瞬触ると、とても無念そうにそう口にした。これで彼は唯の人に戻った訳で。

婦長は俺の目をじっと見る。居心地悪く目を逸らすと、婦長は呆れたように右眉をつり上げた。どうやら怒ってはいない、らしい。

「貴方、イエーガー元帥を助けたこと、後悔してるんじゃないでしょうね」
「……何だ、婦長はエスパーなのか?」
「その位、誰にだって分かります」

あ、そう。俺は苦笑いして、ケビンの方に目を向ける。

あのときは生きてほしいって必死に思っていた。でも、ケビンはどう思っているのか。知る由も無いけど、「もしかしたら」って今更考えてる自分が女々しい。

「ま、ここは大人しく忠告に従っておくよ」

婦長にひらひらと手を振ると椅子を引いて立ち上がる。そのまま俺は振り返らずに廊下に出た。此処にいても苦しいだけだ。

  
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