思いのほか出血が多かったから近くの医者で俺の血を輸血すると、俺とケビン(寝ているが)は急いで教団に戻った。

血が足りなくてふらふらのまま地下水路の舟をえっちらおっちら漕いで、ようやく辿り着く。コムイが笑顔で出迎えたが、軽口を叩いている場合じゃない。幾人もが俺の方を凝視して、俺は幾人もの善意を断りやっとの思いで医療班ブースに辿り着いた。

「あら、おかえりクリス、……って、」
「ぼさっとしてないでそこのベッドに!」

指差された簡易ベッドにケビンを横たえると、漸く肩の荷が下りた気分で深く溜息を吐いた。長い間生きていても、人の死を間近で見るのは中々慣れたものではない。

治療室のマジックミラーの外側から、ケビンの体に色々な管が通るのを眺める。こつりと硬質な音が等間隔に響いて、それは俺の近くで止まった。

「お疲れ様です、元帥」
「労わるんなら俺じゃなくて、ケビンの方だよ」

それに、俺は最低の屑野郎だ。そう揶揄すると、コムイは呆れたように嘆息すると踵を返した。

「なんにせよ、お疲れ様でした」

  
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