目を細めると、倒れているリナリーとそれを守ろうとしているアレンが見えて舌打ちした。彼らの目線の先には、伯爵が居る。 憎き、憎き俺の宿敵。 「オマエは、クリス・アスフォード…! 何年ぶりでしょうカ!」 「感動の再会ってか? 冗談キツイな」 俺を憎々しげに見る目に軽く笑って、イノセンスを発動した。仄明るい光に包まれて浮き、頭に茨冠が載る。この姿を、俺は余り好きではない。 ちらりと下を見ると、我が仲間達は呆然と俺を見ていた。 「 虚空で右手を掴んで伯爵に払うと、掌から液体、聖水が漏れて伯爵の顔面をべちゃべちゃと濡らす。 だがあまり効いていないようで、伯爵の顔に掛かった液体は唐突に蒸発した。 「ウフ、無駄デス!」 「だろうなぁ」 伯爵はその読めない表情を浮べたままこちらを見た。無駄、か。 「それなら、 ティファレト。生命の樹の中心に位置し、生命エネルギーの供給を担うそれはイスラエルの守り手であるミカエルが守護天使である。 とどのつまり、絶対的な守護。 壁に守られたアレンたちは、おそらく伯爵達には見えないのだろう。伯爵はくるくるとあたりを見回し、ふうと溜息を吐いて杖を振った。 「……隠されては仕方ありまセン、ここは一度引きましょうカ」 ← 戻 → |