方舟については、やはり紀元前の話でもあるしもうすこし原始的な空間を想像していたのだが、実際に乗ってみるとその期待はすぐに裏切られた。 白い街並みが永遠と続いていて、まるで一つの国を作り上げたような空間だ。まあこの中に人が住むことを前提として作られたのでそれは当たり前だが、しかし今たった13人のノアが使うにはあまりにも広すぎるという実感が湧く。 この光景を見てしまうと、伯爵が使う魔法のようなものは“科学技術”というよりか“魔術”と称したほうが正しいのかもしれない。まあ見た目が悪の魔術師っぽいし、丁度良い。それで、俺達が勇者だ。 まあ、流石に俺だってそんなことを考えていたって、現在進行形で迷っているという事実は否定できないのだが。 「仕方ないじゃないか。俺達元帥は我侭だから元帥になれたんだよ」 それにどうせ死なないから平気だ、と言おうと口を開いて、ついでに目の前の扉も開けた。 開くと、突然砂煙が顔に当たって呻き目を閉じる。砂が口内に入って気持ち悪いが、それはどうでもよかった。大切なのは、“漸く外に出れた”ことだ。 風がぴたりと止んで目を開くと、そこにはノアの一族と、もはや片手で数えられる程になってしまった仲間達の姿があり。 俺はふと溜息を吐いて、コムイに言った。 「着いたぞ ← 戻 → |