黙々と歩いて石橋の下に腰を落ち着ける。しばらくぶりに座るので腰が痛い。

深く溜息を吐くと、ティエドールがこちらをじとっと見てくるのでなんだ、と促した。

「よくもまあ君が日本まで来れたね。中央から言われたの?」
「いんや、たまたまアジア支部に行ったらバクが方舟あるって言うからつい、ね」

そこに扉があるのならば飛び込むのが常識じゃないか。そういうと、ティエドールは君らしい、と軽く笑った。

「あの、すみません。どなたですか…?」

傍で聞いていたらしい女性(エクソシストらしい)は俺を見て少し首を傾げた。見たこと無い人だ、とこちらも首を傾げる。イノセンスは円盤だろうか、なんだろう。

「こいつこそが、この見た目で大よそ九十歳の最年長元帥、クリス・アスフォードだよ」
「色々あって七十年位時間が止まったまま生活してたんだよ。というかそれじゃ俺が爺みたいじゃないか」

というか、と言葉を続けた。

「君達何しに来たの、江戸まで」
「僕達は師匠を追ってここに着ました」

アレンが答えた。師匠、ってクロスか。酒臭いし若干上から目線なのであまり好きではない。

ふう、とティエドールは息を吐いた。

「……今この世に存在するエクソシストは、教団にいるヘブラスカにソカロとクラウド、マリアン。そしてここにいるたった十人しかいなくなってしまったんだよ。クロス部隊は即時 戦線を離脱すべきじゃないかな」
「特にリナリーとアレンは“ハート”の可能性がある以上、こんな伯爵の住処にいるのは危険だ。さっさと帰ったほうが、」

身のためだ。

そう動かそうとした。しかしふと寝かされていたリナリーの下の地面が黒く塗り潰されたのを見て息を呑む。

「っ伯爵か!」

  
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