愛は世界を滅ぼす
「…何故私にあんなことをしたの」
「それは簡単だ。私が君のことを気に入ったから。その聡明な頭脳と容姿、凡庸な人間とは一味も二味も違う。そんな君にちょっとしたプレゼントのつもりだったんだがね」
「余計なお世話という言葉を貴方の辞書に入れたほうがいいと思うけど。……それで、今度は何の用事なの?」



もうどうにでもなれ、とばかりに質問を投げかけると案外淡々と答えていく神様に若干戦慄を覚えながらももう一つ問うと、今度はおやまあ驚いたとばかりに彼(彼女?)は片眉を釣り上げた。



「君は、この世界の自分には能力が無いと思っているようだが……それは違う。私は君に“異世界へ飛ぶ”能力を授けた。おそらく君があちらの世界へ飛んでしまったのは能力の暴走による結果だろう。それにしても、私は君が喜ぶと思って授けたのだがその認識は違ったようだな」

「……飛んだ迷惑よ」



その言葉は嘘だった。帰りたいと願っていた世界だったけれど、帰ってしまうとむしろあちらが恋しくなる。それでも自分はこちらの人間だから、いつまでも逃避しているわけにはいかない。私はこれからもこっちで生きていくんだから。

そんな思いを汲んだのか汲まなかったのか、親友を乗っ取った神様とやらはとてもいい顔で笑う。



「それなら、君の記憶からも、あちらの世界の記憶からも“君があちらの世界へ飛んだ”ことを一切消去してしまおうか。そうして、君の能力も削除する。それでいいかな?」
「…え、」
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