一回戦はシードだったので他の学校を視察。真田と柳は二回戦も準決勝も軽く勝ってしまった。先輩方も流石で、一試合も取りこぼすことなく決勝を迎えた。凄い。これはかなりすごいことなのだが、俺にとっては案外ありがたくない。試合前まで試合しなかったらよかったのにとか思ってた自分とは正反対だ。

あーあ、と柳と電車に揺られる。真田は俺のひとつ前の駅の方が近く、柳は俺のよっつ後の駅で下りるらしい。まあ真田は時々修行だと言って俺の最寄駅まで歩いて着たりするのだが。



「暇だ…」

「それは仕様が無いだろう。先輩を始め、俺と弦一郎もお前には決勝以外は試合をさせたくないんだ」



弦一郎…って真田のことか。彼の堅苦しさに似合った良い名前だと思うのだが、いつもそのことを褒めても何故か怒られる。俺は褒めてるのに。というか試合させたくないってどういうことなんだ。むやみやたらに五感を奪うからか。

ふむ、としばらく考えたが結論は出ない。よし、名前ネタで行こう。



「ね、柳。俺も蓮二って呼んで良い?」

「ああ、良いぞ。それでは俺も精市と呼ぼう」



名前呼びとか、前世の高校生以来なんですけど。ちょっと嬉しくて笑うと、蓮二も柔らかい笑みを浮べていた。
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