『……今日は、星が綺麗だぞ』

「はあ?」

『どうせカーテンも閉めてないのだろう、ついでに外を見ろ』



いつもならば何言ってんの、と一蹴するような言葉も、妙に抗いようの無いものが篭っているような気がして、ベッドから立ち上がると窓を開け桟に凭れかかった。空を見上げると確かに今日はいつもより星が見える。でも真田が星ねえ、と想像してクスクス笑うと、真田は不振気に眉を顰めたような気がした。



「それで、星がどうしたんだい?」

『馬鹿、下だ』



星は地上には無いだろう。お前が馬鹿かと口に出そうとした瞬間それは意味の無い叫びに代わった。コイツ本物の馬鹿だ、今何時だか分かってんのか十時だぞ十時、幾ら夏だからってこんな時間に外を出歩いていていいのか。お前いっつも早寝早起きの癖に、なあ。



「ばっ、真田!」

「気付くのが遅いぞ、幸村」



ちょっと待ってろ、と言い残し階段を急いで駆け下りた。長い距離を走ったわけでもないのに息が切れる。ぜいぜいと切らしなら玄関を開くと、上から見下ろしたとおりに彼が、その場所に立っていた。
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