皆が凄いと褒めているのは俺の才能だけで、俺の性格とか嗜好とか俺を形作っているものは全て、皆には見えていないらしい。どうしようもない、俺は他人に必要とされたかったのか。 涙を拭いて、出来るだけ見られる顔にするとその辺の先輩に気分が悪いので帰ります、と断りを入れてから帰る。先輩は気にした様子も無く頷いてくれたので本当によかった。誰にも見られていないことを祈る。 母親に詮索されないように家に帰ると直ぐに自分の部屋に戻る。何をする気分にもなれず、そのままベッドに倒れ込んだ。 「……はぁ」 どうしよう。錦先輩に悪いことした、かな。真田もどうしてるだろうか。こんなこと知ったら絶対怒るよな。 うだうだとそんなことを考えていたら、気が付いたらベッドで眠っていた。 |