「真田、ねえってば」

「聞いている。何だ幸村」



帰り道、明らかに不機嫌そうな真田は俺が話しかけてもずっと無視しやがった。こっちだって気まずいのに奴はあろうことか「聞いている」と言う。聞いてるんなら返事位しろよ、全く。

何だ、折角勝ったのに。最近の真田は冷たい。



「もういーや、何でもない」

「……幸村?」



ふん、と鼻息荒く拗ねた俺を見て、真田は呆れたように溜息を吐いた。……人間褒められるってとても大事なことだと思う、切実に。

兎も角。今日、あの試合で、俺は常人への階段を一歩踏み外した気がした。
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