「去年の大会の成績を、幸村は知っているか?」

「え? 確か関東大会は優勝でしょ」



全国は惜しいところまでいったんじゃなかったか。



「しかし、全国で勝てなければ、意味はないだろう」

「えー? そんなもんかなぁ」



自分的に理解は出来るが、他人事としてはあまり納得したくなかった。

俺は吐き捨てるように言った。



「テニスは、勝利とかそういうモノで義務的にやるもんじゃないよ」



勝つためのテニスというのは、非常に嫌気が差す。きっと俺はもう誰かに負けるまで楽しめはしないと思うけれど、こんな思いを他の人にはして欲しくない。

真田はそれを聞いて溜息を吐いた。



「お前ってやつは……」



いや、すまん。何がだ。

理解できていない俺はぽつんと一人置いていかれた。



「なんだよーっ!」
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