「真田も過保護すぎると思わない? 俺はこんなに元気なのに。なんなら今すぐ真田と試合してもいいくらいなのに!」

「そう言ってやるな。弦一郎はあれで一生懸命なんだ」



今日はあれほど毎日来ていた真田は用事とやらで来ないらしく、珍しく蓮二だけだった。はじめは部活の様子とかを聞いていたのだが、成り行きで俺の愚痴になってしまう。もしかしたら蓮二は、真田やわが妹の他に見舞いが来ていなくて、俺の鬱憤のはけ口がないことを見越していたのかもしれない。まあ、今一番俺を悩ませているのは真田の態度だから、まさか真田に打ち明けるわけにはいかない。

お前のことがそれほど大事なのだろう。そう微かに笑いながら蓮二は言った。大事なのは俺の才能であって俺自身ではないのでは、とは以前から度々思っていた。そしてその度に真田に諌められていた。しかし口ではなんとでも言えるものだと思う。なんて言われようと、そのスタンスは変わらない。



「……確かに、珍しい病気だって言われたよ。治る可能性は低すぎるとも。でも、普通なら発症から一週間で山場を迎えるんだって」

「一週間? もう一週間どころか月単位で進んでるぞ」

「そう、そこなんだよ!」



寝転がっていた身体を勢いよく起こせば、蓮二は珍しく驚いたような表情をした。



「医者の話だと、多分あの試合の日が山場だったんだろう、だって。もうほとんど治ってるらしいんだよ。それなのに真田は俺の言い分も聞こうとせずに病人扱いするんだから」

「成程。それが気に食わないんだな? だが、俺もどちらかといえばお前には大人しくしておいてほしいな」

「……蓮二っていっつも真田の味方するよね」

「そんなことはないさ。ただ、俺達はお前が倒れる瞬間を見てしまった。お前の異変に見て見ぬ振りをしていた。それが心苦しいんだ」



俺だって好きで病気になったんじゃないと思ったけれど、それは彼らに言ってもどうしようもなく、ただの俺の泣き言なので心のうちに秘めておいた。
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