「負けて、白石に迷惑掛けたくないから、やって」

「はぁ?」



それは本当に謙也くんが言っていたのだろうか。彼にしてはいやにネガティブすぎると俺は感じたが、オサムちゃんにとってはどうやらそうではないようだった。

何で、負けたら俺が迷惑だって思うんだろう。そんなことは決してない。そんなことを思ったら全力で戦った皆に失礼だし、俺だって負けることはある。



「白石、お前夏の全国で優勝したいって言うとったやろ。それが無意識に重荷となったっちゅーこっちゃ。負けたらアカン、ってな。試合中、お前が発破かけて気持ちは楽になったけど、次また負けたらって思ったら怖いって言っとったで」

「……」



確かに負けるのは怖い。だけれど、その恐怖は次にまた試合をすることを怯えさせるものではなく、次に試合をするときには絶対に勝つという意識を持つためにある。



「ええよオサムちゃん、そのオーダーで」



それに、謙也くんが俺の重荷になるはずが無いんだ。
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