ようやく大会の決勝まで上がることが出来た。突然決勝まで進んだのは大人の事情って奴だ。勢いで言ってしまい若干反省はしたが、これまでの試合でも、謙也くんとダブルスで試合しても特に何も起こらずに勝つことが出来たしきっと大丈夫だ大丈夫。

決勝当日、俺達が何分待っても小春と一氏は集合場所に現れなかったが、ようやく会場に来た。このごろ思うのだが小春のほうはネタとして割り切っているのに対して一氏は本気で小春のことを追いかけているような気がする。まあ二人がホモだろうとネタだろうと試合に勝ってくれればどっちでもいいんだけど。



「蔵リーン!」

「待ってぇ小春うー」

「何よ、アンタの所為で道に迷ったやないの!」



会場の客席の細い道を、二人は割りとガチで走っているので危ないから走るな、と言おうと口を開いたのだが、それよりも先に小春が誰かにぶつかってしまった。あふぅと奇声を上げて小春はぶつかった人を振り返る。俺達も自然にその人影に目を向けたのだが俺だけ不自然にあ、と声を出してしまった。

小春がぶつかったのは金髪ともじゃもじゃ頭だ。小春は途端分かりやすく目をハートにして彼らを見つめている。



「失礼」



金髪の方は、軽く笑ってそう言うなり去って行ってしまった。本当に橘さん(仮)の額に白毫のような黒子があるので俺自身は笑ってしまわないように必死だったのだが、その後千歳(仮)が意味深に振り返って俺を見つめたので余計なフラグが立ったような気がした。今すごい帰りたい気分だ。
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